長崎の被爆体験者をめぐり被爆の事実を示す『客観的な証拠がない』などとする国に反論するため長崎県が提出していた専門家会議の報告書について、国が16日付けで見解を示し、「過去の裁判での事実認定と整合性を欠く施策を行う事は困難」などとして、“広島と同様の救済はできない”とする考えを示しました。

報告書は、国が定める被爆地域外で原爆にあった被爆体験者の救済をめざし、県が設置した専門家会議がまとめ、去年7月、国に提出していたものです。

報告書では、『過去の最高裁判決は判例に該当しない』としたほか、“1999年度に長崎市などがまとめた証言集”などを『客観的資料』として示し、長崎でも黒い雨が降ったと結論づけていました。


しかし国は16日示した見解で、証言集の客観性の議論には踏み込まず「長崎の報告書は過去の訴訟の解釈や、証言集の信ぴょう性の評価を一方的に論じており、過去の訴訟の判示とも矛盾している」とし「過去の裁判で事実認定がなされている以上、これと整合性を欠く施策を行うことは困難」とし、“広島の黒い雨訴訟で被爆者と認められた原告と同様の取り扱いはできない”としました。


長崎市原爆被爆対策部 調査課 阿波村 功一 課長:
「ゼロ回答。従来の主張を繰り返しているだけで進展はなかった。
“客観的云々”という議論より『(裁判の)証拠として採用されているので、それを以って判断している。そういう風に捉えて下さい』と」
記者(今まで国は客観的なものが必要と繰り返してきたのに?)

「…そうですね。新たなまさしく広島の雨域を示すような事実・資料等が出てこない限りは従来の域を出ないのかなと思う」

16日、長崎地裁では被爆体験者訴訟の本人尋問が行われ「原爆由来の白い灰が大雪の様に降った」など当時の状況を証言したばかりでした。

原告 被爆体験者 濵田 武男さん(83):
「裁判の尋問が終わって気持ち的には喜んでいたんだけど、頭を後ろから殴られたような気がしてね。悔しいの一言だね。なんで昨日の今日じゃろか」

県と長崎市は今後も国と協議を続けていくとしています。