「受験」に「就職」…。激しい競争社会が続く韓国ですが、今、若者の間である「人間関係」が流行しています。そのキーワードは“1回きりの関係”です。

夜の公園を全力で走る大人たち。ここは、韓国ソウル市内にある公園です。

記者
「捕まえました。牢屋に入ってください」

夜遅く、彼らが本気で興じていたのは日本の「鬼ごっこ」の一種です。

記者
「皆さん全力で走っています。ここにいる数十人、お互いの名前も年齢も一切知らない『赤の他人』です」

スマホのアプリを通じて集まった人たちで、ただ「鬼ごっこ」をしたいと思った人が参加しています。参加者は本名も年齢も明かさないことになっています。

参加した女性(10代)
「受験生なので、勉強や友人関係でストレスが多いんですが、この集まりを通してすごくストレスが解消されます」
参加した男性(10代)
「ここは比較的、関係が『軽い』ですね。友達とは違って、一度話せば忘れてくれる人たちだから楽です」

夢中で遊んだ後は、連絡先も交換せず帰っていきました。

こうした1回きりの関係は、ここでも。ポテトを前に写真撮影をする5人組。みな初対面で、ただ好きなポテトを気兼ねなく食べるだけの集まりです。

主催者
「負担なく、自分の好きなことをみんなと一緒にできる点が最大のメリットです」

プライベートの質問はNG。会話は基本、ポテトに関する話題だけ。

参加した女性(30代)
「友達関係だと、色々と気を使うことが多いですよね」
参加した男性(30代)
「ここでは知らない人だから自分を飾る必要がありません。嫌になったら次から来なければいいので本当に気楽です」

1時間後、食べ終わると…

記者
「連絡先の交換もなく、次に会う約束もなく解散となりました。ソウルの若者は今、こうした距離感が心地良いようです」

なぜ今、韓国の若者は「1回きり」の繋がりを求めるのでしょうか。専門家は、背景に「激しい受験戦争や就職難」などがあると指摘します。

ソウル大学 心理学科 カク・グムジュ名誉教授
「韓国社会は速いスピードで成長したため、非常に激しい競争社会です。周りからどう見られているかを常に意識しなければいけない社会です。見ず知らずの他人は、人間関係の疲労感を『解放』する憩いの場として機能しています」

韓国の若者にとって、知らない人との時間は過酷な社会を生き抜くための「心のオアシス」になっています。