2024年4月、北海道旭川市の橋から当時17歳の女子高校生を川に落下させ、殺害した罪などに問われている旭川市の無職・内田梨瑚被告(23)の裁判員裁判で、8日、検察は内田被告に対し懲役27年を求刑しました。
<要旨>検察の論告
(殺人の実行行為性・故意・共謀の有無)
女子高校生が神居大橋から転落した直後の理由が何であるにせよ、転落による女子高校生の死の結果は、内田被告らの執ようかつ強度な暴行、脅迫、長時間にわたる監禁や悪質なわいせつ行為の末に「落ちろ」「死ねや」と脅迫するなどした行為が招いたもので、被告人が殺人の実行行為を行ったと認められる。
被告人は、女子高校生が死亡するに至る危険のある行為を、それと分かった上で、そのような行為を行うことを共謀した受刑者の女(当時19)との間で相互に認識し、共同して実行したといえ、殺人の故意及び共謀のいずれも認められる。
(不同意わいせつ致死罪の成否)
女子高校生が神居大橋から転落したのは、わいせつ行為を含む被告人らの行為によって女子高校生が追い詰められた末のことであり、殺人の実行行為とわいせつ行為は不可分(切り離すことができない)。よって、時間的・場所的接着性、意思の同一性のいずれも認められ、女子高校生の死亡結果がわいせつ行為に随伴した行為により生じたといえることは明らかだから、不同意わいせつ致死罪も成立する。
(監禁の始期)
被告人は、自身や少年(当時16)の脅迫によって女子高校生の自由な意思を奪って被告人の車に乗せたのであり、女子高校生が真に自由な意思で乗ることを選択したわけではないから、道の駅で女子高校生を車に乗せた時点で監禁罪が成立する。
■情状について
・行動の自由を長時間にわたって完全に奪うのみならず、人格の尊厳を否定する取り扱いをし、何をしても被告人らから逃れることはできないと思わせて被告人らの支配下に置いた。
・心身ともに極限まで追い込むとともに人格の尊厳を踏みにじった挙句、最期まで苦痛を与え続けながら確実に死に至らしめ、その痕跡すら残らない方法で殺害しており、極めて残虐・悪質。
・犯行に至る経緯・犯行動機は身勝手極まりなく、被告人に有利に酌むべき余地は一切ない。
・心身ともに追い込まれた挙句、最期の期間までもがき苦しみながら亡くなり、将来の夢や希望の一切が絶たれた女子高校生の苦痛や無念さを言葉で表し尽くすことはできない。
・(遺族が)極めて厳しい処罰感情を抱くのは当然、ご遺族の処罰感情も十分に考慮されるべき。
・女子高校生の生命に何ら配慮せず、犯行発覚を妨げるために念入りに証拠隠滅を重ねた。
・被告人が本件の首謀者かつ主犯であることは明らか。各犯行においても主体的に重要な役割を担っており、共犯者の中で最も重い責任を負うべきは被告人である。
■内田被告に有利に酌むべき事情など
(女子高校生に対する謝罪文を作成)
・結局罪を受け入れておらず、自己の責任を矮小化するような供述
・被告人に有利に考慮するとしても、その程度は非常に限定的
(警察への通報や、一人で来なければ事件は起きなかった)
・そもそも一人で道の駅に来るよう仕向けたのは被告人である
(女子高校生は、自身のSNSに別の被告人の画像も無断使用していた)
・供述が真実なら、被告人は女子高校生を責めたはずだが、言動を見聞きした共犯者はいない
・女子高校生の携帯電話機の解析結果と整合しない
■求刑
・被告人の行為は、女子高校生の人格と尊厳を踏みにじるもの、殺害の残虐さは殺人事件の中でも突出していることを踏まえれば、無期懲役を求刑することも十分考えられる。
・他方、無期懲役となった殺人・強制わいせつ致死の事案は、いずれも性欲を満たすために被害者を「性のはけぐち」とした挙句に殺害したというものである。これに対し、本件は、生命・人格の尊厳を無視する顕著な悪質さや意思決定に対する強い非難が認められるものの、わいせつ行為は女子高校生に対する「制裁」のために全裸にさせたというものであり、この違いを考慮する必要がある。
・共謀した受刑者の女(当時19)は、被告人と全く同じ事案で起訴され、事実関係を争わず、懲役23年の刑が確定している。被告人とは別の裁判での審理結果であるから区別して考える必要がある一方、公平な裁判を行うべきとの観点からは、被告人の量刑を決定するに当たっては、受刑者の女に対する量刑とのバランスも十分考慮すべき。
・全ての事情を考慮し、関係する法令の規定を適用し、懲役27年に処すべきであり、これを下回ることは被告人の責任を不当に軽く見るもので不相当である。
<要旨>弁護側の弁論
少年(当時19)は女子高校生を置き去りにするのかと思って、(ビデオ通話の)内田被告から「女子高校生の親が迎えに来ることになっている」と言われる。少年は悲鳴、「ダンッ」という音を聞いていないが、内田被告は女子高校生を置いて立ち去るときに音が聞こえている。これは離れていた時、足音で聞こえていない可能性もある。少年が聞いていなくても矛盾はない。
立ち去るときに4000円とスマートフォンを置いているため、内田被告に殺意はなかった、実行行為はなかった。
受刑者の女(当時19)の証言は全く信用できない。内田被告を否定するためにあえてした証言。内田被告の証言は具体的で、スマートフォンが1台見つかっていないのは、裏付けとなっている。女子高校生を置いて立ち去り、駐車場に向かう際に「キャー」と「ダンッ」が聞こえた。内田被告は「受刑者の女と顔を合わせてキャッと言った」と供述。駐車場に戻ってくるかもと15分待機した。
受刑者の女の内田被告に対する発言が「最初から最後まで全部嘘」と言っていたのは、反発、よからぬ感情があらわになっているから。自身の裁判では言ってなかった過剰な表現。女は受刑生活で内田は裁判。受刑者の女は内田被告に対して妬んでいる、もしくは敵意を持っている。
不同意わいせつ致死について、女子高校生を全裸にしているが、これによって亡くなったわけではない。別な行為によって亡くなったので、不同意わいせつ致死罪は成立しない。
事件の発端は、女子高校生が被告人の写真をインスタグラムに流用したこと。
綿密に計画したわけではない。当時の行動は場当たり的。女子高校生も写真をなぜ使ったのかということに対して、「いい写真だったから」と、いけないことへの認識も不足している。「すみません」という言葉にも誠意が感じられない。
留萌の道の駅で合流して因果がつながってしまった。女子高校生は1人で来た。1人で道の駅に現れるとは考えていなかった。会いたがるはずがない、なめた態度をした女子高校生が来ることはないと思っていた。たまたまガソリンがなくなり、旭川に帰れなくなると思い、旭川へ行くことになった。偶然の積み重ねで旭川に来ることになった。ガソリンの赤ランプのまま旭川に入り、すぐに給油したのは事実。
コンビニに寄ったとき、女子高校生が助けを求めた。内田被告と受刑者の女を怒らせた。暴力をふるったことが、防犯カメラに映っていて、受刑者の女は困った。内田被告はコンビニに通報しないように言ったが、立ち去った後に通報されると思った。偶発的に、神居古潭に行くことに。計画的犯行ではなく、場当たり的である。待ち合わせに1人で来たり、ガソリンがなくなったり、留萌に行く途中にコンビニで起きたこと、偶発的だった。内田被告がコントロールしていたわけではない。計画性がない犯行。
内田被告はこれまで事件を起こしておらず、前科前歴がない。自分自身と向き合っている。女子高校生が亡くなったことの重大さ感じ、日々送っている。ノートを15冊書いた。裁判では、頭も下げている。感情ではなく、理性を持って判断してほしい。社会復帰に向けて、歩みを進めている。真摯な反省をしている。被告人の母は毎日会いに来ていて、祖父母も面会。事件について本当のことを話している。
閉廷後、弁護人によりますと、情状は求めず、罪としての捉え方が違うことから、弁論で科刑意見(弁護側が求める刑罰)は述べなかったということです。














