青信号で横断歩道を渡っていた3歳の女の子が、左折してきた車にひかれて亡くなるという痛ましい事故の判決が、きょう水戸地裁でありました。この、いわゆる左折巻き込み事故の防止に「ある信号が有効だ」と遺族は訴えています。

4つ上のお兄ちゃんとふざけあうのは、原田恵理香ちゃん。2022年6月22日生まれの3歳です。

母親
「言葉も覚え始めて、これからたくさん学ぼうとしていて、一番かわいい時期だったと思います」

去年10月からは幼稚園にも通い始めました。しかし、そのわずか1か月後、幼稚園の帰り道に…

母親
「恵理香が車にひかれたと電話で伝えられて頭が真っ白になって、信じられない感じになって。あと1~2時間の余命ですと言われて、泣き崩れました」

恵理香ちゃんは事故に巻き込まれ死亡しました。3歳でした。

事故があったのは茨城県水戸市の大工町交差点。複雑な形状で、2013年には茨城県内の全ての交差点の中で最も事故が多い交差点に。その後も毎年事故が相次ぎ、警察は視界を妨げる植木を撤去したり、注意看板を設置したりしてきました。しかし、それでも事故が起きたのです。

母親
「祖母と子どもが一緒に歩いていて、青信号になって駆け出す形で横断歩道に出てしまって、青信号で左折してきた車にひかれてしまいました」

青信号で横断歩道を渡っていた恵理香ちゃん。同じく青信号で左折してきた車の前輪に巻き込まれるようにしてひかれました。

母親
「たしかに歩道橋の橋脚があって見づらい。直角に曲がるのではなく、カーブを描いて曲がってくる特殊な形状」

運転していたのは自動車教習所の経営者の男。きょうの判決で水戸地裁は、「青信号で渡っていた被害者に落ち度はない」として被告の過失を認めつつ、「被告は反省している」などとして拘禁刑2年・執行猶予3年の判決を言い渡しました。

これは、ある交通事故の瞬間をとらえたドライブレコーダーの映像です。歩行者がいなくなるのを待って左折したその時…

青信号で渡る歩行者や自転車が同じく青信号で左折してきた車に巻き込まれる事故が後を絶ちません。いわゆる「左折巻き込み事故」です。

亡くなった恵理香ちゃんの母親は、ある信号の導入が「左折巻き込み事故」の防止につながると訴えています。それは「歩車分離式信号」という信号です。例えば、車用の信号が青のときは、歩行者用は赤。車側が赤になったら歩行者用が青に変わるというように、歩行者と車の信号が青になるタイミングをずらすものです。

水戸市内にも歩車分離式信号があります。

記者
「いま歩行者信号が青になり、小学生が横断歩道を渡り始めました」

この交差点では2002年、小学5年生が左折してきたダンプカーにひかれて亡くなる事故があり、それをきっかけに歩車分離式信号が導入されました。近所の人は…

歩行者
「歩行者は歩行者で、車は車でいくので、全部車が止まった状態で歩行者が渡れるので安全だと思う」

ドライバー
「小学生や中学生も通るので歩車分離になってよかった」

ただ…

ドライバー
「待ち時間が長くなってしまうからか、青信号で矢印が出て強引に曲がってくる方もいるのでそれは怖い」

2002年に行われた警察庁による実証実験では、人と車の事故がおよそ7割も減少するという大きな効果がありました。

しかし、全国的には歩車分離式信号の割合は全信号の5%にすぎません。背景には、歩車分離式信号では歩行者・車の双方の待ち時間が増えるため、信号無視を誘発したり、渋滞が起こったりする懸念があります。

去年、警察庁は歩車分離式信号の導入を促そうと23年ぶりに指針を改訂しました。歩車分離であれば防げたと考えられる事故が5年に2件以上発生した場合や、死亡事故が1件でも起きた場合、発生の危険が高いと見込まれた場合には導入を検討するよう全国の警察に通達しました。

母親
「本当に明るくて社交的で、どんな人とでも打ち解けて仲良くなれる子でした」

恵理香ちゃんの事故現場に歩車分離式信号は導入されるのか。茨城県警は「ご遺族の要望は把握しており、今回の死亡事故を受けて、歩車分離式信号の導入の可否について必要な検討を進めている」としています。

母親
「渋滞よりも安全の方が大事ですし、この事故から何も学ばずに、何も対策されずに、また同じ事故が起こったら何のために恵理香は死んだんだって。それだけは絶対嫌なんですよ」