かつて国が強制的に土地を取得しようとして、住民などが激しく抵抗した「成田闘争」。その舞台となった成田空港で、再び「土地の強制収用」が検討されています。何が起きているのでしょうか。
千葉県にある成田空港。ゴールデンウィークで賑わうここではかつて…。
1966年、国が地元住民に説明することなく成田空港の建設を正式に決定すると、地元住民や過激派の学生を中心に激しい反対運動が起きました。双方に死傷者が出た「成田闘争」です。
「収用法もねえだ。おらの土地だ」
このときに行われたのが、土地の強制収用です。土地収用法に基づき国などが地権者から強制的に土地を取得するもので、2回にわたって行われました。
国は、成田空港の開港後に、当時の強引な手法を謝罪し、地元住民との対話を重視する姿勢に転じました。
そして今、成田空港では「第2の開港」と呼ばれるプロジェクトが進んでいます。現在の成田空港は「A滑走路」と「B滑走路」の2本で運用していますが、プロジェクトでは「B滑走路」を延伸し、新たに「C滑走路」を整備します。新たな滑走路が完成すれば、空港の発着回数が現在の年間34万回から50万回に増え、今後見込まれるさらなる需要の増加に応えられるということです。
空港は新滑走路について、2029年3月末までの運用開始を目指し工事を進めてきましたが、1年以上遅れることが先月明らかになりました。必要な土地の取得が難航し、現在も残り1割ほどの土地が取得できていないのです。
こうしたなか、空港が打ち出したのが…。
成田国際空港会社 藤井直樹社長
「最終的に用地取得を確実にするために、土地収用制度の活用も必要である」
土地の強制収用を再び検討するというのです。
地元を取材すると…。
土地を売却した人
「ちょっと残念な話なんですがね。『空港と一緒に繁栄していく』と皆さんが認識していたから、(私が住む地区では)反対する人は一人もいなかった」
成田空港の近くに住む人
「空港から変な話、多少の恩恵もくるから反対している人はいないと思うけど」
取材した人の多くは、新滑走路の建設に反対する人はあまりいないと口を揃えます。
それではなぜ、土地の取得が完了しないのか…。
滑走路建設に賛成する住民団体で会長をつとめる石井新二氏(78)。「相続の問題」を理由のひとつに挙げます。
空港と共存共栄を目指す会 石井新二会長
「(土地を持つ)親が死んだとき、当然子どもに相続権が発生するんだけど、子ども同士で話し合いがうまく進んでいない」
石井氏によると、残る1割の地権者のほとんどが“土地を売りたいけど売れない”状態だということで、この問題を解決するためには「強制収用」の検討が必要だと主張しています。
石井氏は、あの「成田闘争」の中心人物。かつて、あれほど反対した「強制収用」を再び検討すべきとする理由は、空港がこれまでに400回を超える住民説明会を開催してきたことにあるといいます。
空港と共存共栄を目指す会 石井新二会長
「(Q.成田闘争の時とは全然違う?)全然違いますよね。(空港は)みんなの意見もよく聞いて、要するに懇切丁寧にやってきて、だから私にしては『これでもかよ。まだかよ』って」
「環境破壊」と書かれた横断幕。つくったのは、地権者で土地の売却を拒否している農家の男性です。
農家の男性
「航空機による地球温暖化や騒音の問題があるなかで、新滑走路の建設は間違っている」
空港は、残りの土地の取得に向けて、丁寧な話し合いを続けていくとしています。
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