2026年度の国の防衛関連予算が初めて9兆円を超える見通しとなる中、長崎県佐世保市で「防衛産業の動向と地域経済への影響」をテーマにしたセミナーが開かれました。

佐世保市で11日、「防衛産業セミナー in 佐世保 ~防衛産業の動向と地域経済へのインパクト~」が開催されました。十八親和銀行、みずほ銀行、佐世保商工会議所が主催したこのセミナーには、宮島大典市長をはじめ、自衛隊関係者や地元経営者ら約190人が参加。防衛予算の推移や地元企業の参入に向けた具体的な提言に耳を傾け、地域経済の活性化に向けた道筋を探りました。

「佐世保での好循環創出」に期待 島田元次官が講演

基調講演には元防衛事務次官の島田 和久氏が登壇。島田氏は、政府が防衛力の抜本的強化を進める中で「防衛力の強化と経済の発展の好循環を生み出す」という方針を説明しました。その上で、「今、政府が取り組もうとしている好循環の創出。これが佐世保でできなければ日本中どこでもできない」と述べ、歴史的に基地と共に歩んできた佐世保が、この政策の重要なモデルケースになるとの認識を示しました。

基地を民間に開放した「実証特区」提案

みずほ銀行産業調査部の長沼 良氏は、足元の防衛予算の分析と共に、地域経済を活性化させるための具体的なアイデアを提示しました。長沼氏は、佐世保を海洋技術の拠点である「イノベーション・ハブ」と位置づけ、大手企業やスタートアップを誘致することを提言。具体策として、基地施設を民間に開放し、水中ドローンや自律航行船といった防衛先端技術のテスト場として活用する「実証特区」の創設を提案しました。「佐世保ならではのものを、日本全体の防衛産業の強みと言えるところまで持って行けるのではないか」と、地域の特性を活かした産業振興の可能性を語りました。

地元企業が受注できる「仕組みづくり」を

パネルディスカッションでは、地元企業の受注機会をどう確保するかが議論の柱となりました。佐世保商工会議所の池田 真秀副会頭は、基地内の工事や物資補給などの発注が現状では大手企業中心となっている実態を指摘。「地元と行政が連携しながら、地域にしっかりお金が落ちる仕組みを作っていくことが重要だ」と訴えました。
池田副会頭は、「佐世保はこれまで『基地の街』と言われてきたが、これからは『基地を活かす街』。新しい価値を生み出していきたい」と言及し、基地という地域資源を経済成長に結びつける姿勢を示しました。

宮島市長「造船再生を中小企業へ波及させる」

セミナー後、宮島 大典市長は、防衛予算の増額分を地元の基幹産業である造船業にどう波及させるかについて次のように述べました。「造船自体も非常に裾野の広い産業。もう一度造船を再生させることが重要であり、その経済効果がさまざまな中小企業にも及ぶよう、つなげていきたい」。市長は現在策定中の「佐世保市基地経済ビジョン」を通じて、経済効果を地域全体に浸透させる考えを述べました。

十八親和銀行「伴走支援」を継続

シンポジウムを主催した十八親和銀行の山川 信彦頭取は、パネルディスカッションで「防衛産業の大切さを今後も、官民金学が一体となってアピールしていく必要がある」と総括。同行は今後も地元企業が防衛関連の新たなビジネスに参入できるよう、情報提供やマッチング、資金面でのサポートなどの伴走支援を継続していく方針です。

防衛予算の規模が拡大する中で、その影響を地域経済の持続的な発展にどう繋げていくのか、佐世保では産学官金の連携に期待感が高まっています。