対立する争点とあいまいな記憶
堀啓知キャスター)
札幌地裁の元裁判官 内田健太弁護士に解説いただきます。よろしくお願いします。
堀内大輝キャスター)
きょうの法廷では、6家族の代表が、桂田被告に直接質問しました。

当時34歳の息子を亡くした父親は「息子の復元したカメラには「条件付き運航」という言葉はなかったが 本当か?」との問いには、桂田被告は聞き取れないほどの小さく声を発するに留まりました。
行方不明となっている息子 小柳宝大さんの父親は「この事件は、安全より利益を優先させた結果だったとは思わないのか」と問い質したのに対し、桂田被告は「利益を優先させたつもりはない。結果的にとんでもないことになり、すみません」と答えました。
また「被告の妻に『新たな大きな事件があったら収まる』とのLINEを送っていたのか」と問い質すと、桂田被告は「マスコミが来ていて夜も遅くなっていた。安心させるつもりで送った」と答えると、父親は「冗談じゃない」と 声を荒げて反論しました。
幼い子どもが行方不明の家族は、同年代の幼い子どもがいる桂田被告に対し「子どもが自分より先に死ぬことを想像したことがあるか」と涙ながらに質すと、桂田被告は「失ったものは戻らない。喪失感でいっぱいになると思う」と答えていました。
堀キャスター)
内田弁護士は元裁判官ですが、被告の態度や発言を、裁判官の立場なら どう見ますか?
内田弁護士)
有罪かどうかが争点になっていますので、裁判としては事故当日に何があったのか、事実がどうだったのかに着目する必要があると思います。
堀内キャスター)
きょう法廷で質問を終えた家族の声です。

行方不明の乗客・小柳宝大さんの父(4日午後6時ごろ)
「桂田被告は記憶にないとか、いっぱいあったから以前の話についてはしかたないけど、本当にそういう部分でよかったのかという問いかけに『申し訳ございません』とはっきり言ったからよかった」
堀内キャスター)
裁判の最大の争点は、運航会社社長で運航管理者の桂田被告が「事故を予見できたのか」です。

検察側は、悪天候が予想され、事故を予見できたにもかかわらず 出航を判断したと主張しています。
一方、弁護側は、国の検査でも見逃された 船の出入り口=ハッチの不具合が原因の事故だったうえに、船長の独断で航行を続けたことで予見はできなかったとして、無罪を訴えています。
双方の主張が対立する中での被告人質問では、 桂田被告の答え方や姿勢にも、差がありました。

桂田被告の運航管理者としての知識について、弁護側の「運航管理者として天候調査の方法」の質問に対し、桂田被告は「気象会社やGPVなどのサイトを毎日最低1回見ている」と答えました。
一方、検察側が「天気図の確認はしていたのか」「気圧配置が天候にどう影響するのか」との問いに、「今でも分からない」と答えました。
事故当日の朝の、船長とのやり取りについて、弁護側に対しては「沿岸波浪予報などを見て、午前中であれば基準値以内で戻れるとみて、『知床岬コース』は午前中に戻ると判断した」「船長と海を見ながら出航の判断を話した。『条件付き運航』と言葉として出たかは忘れた」と答えました。
一方、検察側の「船長の発言は記憶にあるか?」の質問には「そこまで覚えていない『条件付き運航』という認識」
「最終は船長の現場判断」で「船長は、ベテランではないので勝手に行くことはないと思った」と答えました。
堀キャスター)
内田さん。被告とともに出航を判断した船長も亡くなっていて、被告しか知り得ないことを明らかにする法廷ですが、あいまいな部分が多くあります。裁判官が判断するうえで、難しいところは何ですか?
内田弁護士)
刑事事件では疑わしい場合は被告の利益と考えるのが原則ですので、どっちかわからないということであれば、被告にとって最大限有利になる。条件付き運航についてどういう発言があったかについて、どんな事実をもとに判断すればいいか、すごく悩ましいポイントだと思います。
堀キャスター)
家族の質問は判決を考えるうえでどう影響しますか。
内田弁護士)
家族側の代理人質問については、過失として重要なんだというふうに質問していますので、裁判所はしっかり耳を傾けるべきだと思います。
ご家族の質問についても、仮に有罪となり、量刑判断ということになれば、十分に考慮されるものだと考えています。
堀)裁判の論告求刑公判は来月16日、判決は6月17日が予定されています。











