2025年11月30日、今季限りでの引退を表明していた深井一希選手(30)の現役ラストマッチ当日。
深井一希選手
「おはようございます」
11月、現役最後の1日も、いつも通り、宮の沢からスタートした。
小学4年のアカデミー合格から、コンサドーレ一筋。年代別の日本代表にも選出されるなど「赤黒の逸材」として注目を集めていた。
高嶺朋樹選手
「小学校からお世話になっていたので、深井さんがユースのときの年代っていうのはすごく強かったし、札幌のユースの中でも特別な存在だったと思います。自分としてもすごく憧れる存在で、いろいろアドバイスもいただきましたし、サッカー選手としてもいろんなことを教えてもらって今の自分に繋がってるなと思ってますね」
中村桐耶選手
「コンサドーレ一筋で長い間プレーしていて、派手なプレーとか、うまさを見せるプレーではないですけど、淡々とミスのないプレーは本当に参考になりますし、一希くんが今までやってきたプレーっていうのは僕にとってもすごい参考になるというか、勉強させてもらっています」
大きな影響を与えた、その姿とプレースタイル。
22年間、赤黒を背負い続けた。

ラストマッチを迎える大和ハウスプレミストドームは、サポーターの熱気と「背番号8」で埋め尽くされていた。
サポーター
「自分の私生活だったり、応援しているサポーターも勇気をもらえるプレーをしていた」
「2019年のルヴァンの決勝のヘディングを生で見た。きょうはすごい感慨深いので、1秒でも長くピッチで見たい」

深井一希といえば、チームやファンの記憶に深く刻まれたゴールがある。
2019年ルヴァンカップ決勝の川崎フロンターレ戦。決勝1点ビハインドの後半アディショナルタイム…コーナーキックをヘディングで押し込み、瀬戸際で追いついたゴール。
諦めなければ奇跡は起こる、それを証明し続けてきたのが、深井一希だ。
ラストマッチのドームには、”いちばんのサポーター”も。

妻のかれんさん
「もう全然緊張してないって、今日も私がインタビューしたところ。(スピーチは)先輩同期後輩で書き終えたけど、やっぱり裕樹くんにだけ何か言おうかなとか」
妻・かれんさんと、3月に生まれたばかりの長男れおちゃん。家族にとっても、特別な1日だ。
かれんさん
「当たり前にコンサドーレの8番は深井一希だって思っていたのが、来年からは違う人になると思うと、悲しいですよね。どこか街中で8という数字を見ると夫の番号だと思っていたけど、もう夫の番号じゃないというのが悲しいというか」
プロ入り後、「前十字靭帯断裂」など、両ひざを合わせて、5度の手術を経験。サッカー人生の大半を費やした「相棒との会話」これが最後だ。
深井一希選手
「たくさん良い思いをさせてもらったので、感謝の気持ちももちろんありますし、さすがに苦労させすぎだろうという気持ちもある。5回大ケガに見舞われながらも、素晴らしいキャリアを送れたんじゃないかと、今は胸を張って言える」
いまでも、ピッチに立てば「違い」を生み出せる。それでも、次に進む決断をした。
妻のかれんさん
「このまま1年2年とかはやり続けることはできるけど、その後の人生はどうなっちゃうんだろう、と。れおちゃんのこと、運動会とか一緒に走ったりとか。動き回るのに一緒に公園に行くっていうことを犠牲にしてまで、この1年を無理してやるっていうのはっていうところで、私(メンバーに)選ばれるとすごい喜んじゃうから。言いづらかったって、だからそれだけなんか圧というかプレッシャーかけちゃっていたんだなって」
この一戦への思いは、チームメイトも同じ。
荒野拓馬選手
「長い時間一緒にいることが多いので、絆っていう部分で、最後ここまで時間を過ごせたっていうのは、これからサッカーを続けていく中で大きな財産になると思います」
宮澤裕樹選手
「このチームにいろんなものを残した選手だと思うし、語らずともチームのためにやれる男だと改めて思った。このゲームに懸ける思いは、僕もありましたし。そこまでたどり着けなかったですけど、それだけ一希に、思い入れがあるので」
最初で最後のエスコートキッズ。パパの姿は、どのように映るのだろう。さあ、最高のフィナーレだ。
深井一希選手(試合後)
「たくさんの選手が、試合中にいろいろと声を掛けてくれて、楽しみながら。(荒野)拓馬くんなんかは『無理するな。きつかったら俺が走る』って言ってくれたり、(高嶺)朋樹も『全部、僕がカバーするんで』って言ってくれたり、みんな真剣なんですけど、少し一緒に楽しみながら話してくれてたっていう感じ」
木戸柊摩選手
「柴田監督にただの交代じゃないって言われた。僕ら若手が今後引っ張っていくっていう意味での、交代なのかなと思ってます」
ついに「背番号8」がピッチを去る。コンサドーレを背負い続けてきた男。その表情はすがすがしかった。
別れの言葉には、22年間の素直な思いが、つづられていた。
深井一希選手
「13年前、皆さんの大きな期待を感じながらこのチームに入団しました。試合に出て、日本代表になり、海外で活躍する。そんな大きな夢を持っていましたが、全てを叶えることはできませんでした」
「皆さんご存じの通り、怪我との戦いがとても長くなってしまいました。とてもとても長く真っ暗なトンネルの中で1人でひたすらもがき苦しむ毎日でした。そんな僕がここまで続けられたのは、皆さんからの温かい声がいつも僕の元に届いていたからです。コンサドーレのサポーターは優しすぎる。そんな声をこれまでよく聞きましたが、僕はそんな皆さんの優しさが大好きでした。これからもその優しさでこのチームを支えていただけたら嬉しいです」
「そして両親、ここまでどんなことがあっても、どんなことが起きても、ずっと味方でいて、助けてくれてありがとう。きっと自分の子どもがこれだけ大怪我を繰り返すと、自分たちが何か悪かったんじゃないか。そう考えさせてしまったことも多くあったんじゃないかと思います。そんなことを思ったことは1度もなく、2人のおかげで、どんなことがあってもくじけずに、諦めずに戦うことができる男になれたと思うし、これだけたくさんの人に応援してもらえる選手になれたと思います。本当に感謝しかありません。ありがとうございます」
「最後に、妻のかれん。プロ1年目に出会い、これまでたくさんの怪我をしてしまい、嬉しいことや悲しいことよりも、苦しく悲しい辛い日々の方が多かったと思います。活躍している試合を見せるより、入院やり手術、リハビリばかり見せることになってしまって本当に申し訳なく思っています。それでも、どんな時でも1番そばで支えて助けてくれて本当に助かりました。これからは痛々しい姿ではなく、強くたくましい姿を見せられるよう頑張るので、今後ともよろしくお願いします」
「小学校4年生から22年間、こんなにも怪我だらけの僕、僕を助けてくれて、応援してくれて、本当にありがとうございました」
【2025年12月31日(水)「コンサドーレイズム スペシャル」にて放送】














