パリオリンピック™で注目を集めた「ブレイキン」。日本人初の世界王者となった男性が指導するダンススクールが静岡県内にあります。プロを目指す実力者から、障害があるメンバーまで、約250人のメンバーが、今週末、一年間の努力を表現する発表会に挑みます。

静岡県藤枝市と掛川市で活動するカラサワダンスクルー。ブレイキンやヒップホップなどを約250人が学んでいます。講師を務めるのは、唐澤剛史さん(49)。唐澤さんは日本ブレイキン界のレジェンドの1人です。

唐澤さんは21歳のとき、1998年にイギリスで行われたワールドカップ団体戦に出場。日本人初の世界王者に輝きました。

華々しい経歴を持つ唐澤さんですが、高校時代に発症した脱毛症を理由に半年間引きこもった過去があります。絶望の淵で唐澤さんを救ったのが、ブレイキンでした。

スクールには、ダウン症や自閉症などの障害がある人が通う「ハートフルクラス」があります。メンバーは約50人。

<カラサワダンスクルー 唐澤剛史さん>
「その人の良さってものを引き出すためにそのダンスっていうツールがある。一番の重点はその人がその個性を生かし切ったところ」

ダウン症の柴田光浩さん。2024年の発表会で浴びた歓声が忘れられません。2025年6月、光浩さんは秋の発表会のフィナーレで自分だけのステージをやりたいと唐澤さんに申し出ました。

<柴田光浩さん>
「じゃあ僕を、ゲストとしては無理でしょうか」

<唐澤さん>
「え、自分をゲストにして自分のコーナーを作ってくれってこと?」

<光浩さん>
「はい。その覚悟はできております。だから僕は、家でもここでも練習、かなり練習しました」

<唐澤さん>
「それだけどさ、それ、みんなそれやりたいって言ったらどうなると思う」

唐澤さんは、みんなが納得する理由を求めました。光浩さんの思いを聞き出し、どうやってその熱量を表現できるか。唐澤さんは、約5か月をかけて、対話を重ねました。

<光浩さんの母 柴田幸子さん>
「やっぱり思いを伝えられるっていうのは、(光浩さんにとって)自分を理解してくれている人じゃないとできないと思うので、一人の人として見てくださっていることに感謝をしています」

10月25日。秋の発表会まで2週間。結論を出した唐澤さんは、光浩さんの思いに応えました。

<唐澤さん>
「ここまでソロやらせてくれよっていう奴いなかったんだよ。だから、俺が光浩に贈れる気持ちとしては一番最後にソロをやるんだよ。(ソロパートが)流れて行って光浩で終わるから」

<光浩さん>
「はい!」

メンバー1人1人がソロをつなぐパートで、光浩さんをフィナーレに抜擢したのです。

<光浩さん>
「1年間やってきたヒップホップを、最高のステージで踊れたらと思います」

<唐澤さん>
「(光浩には)今あるもの(立ち位置)で自分を表現して、自分がやりたいことをそこに乗せるという良さとか、見せ方もカッコよさの一つだと思う。(発表会が)終わった後にどう思ったかというのを光浩に、(改めて)聞いてっていうやり取りをしていこうかなと思いましたね」

11月1日、本番前最後の練習。唐澤さんの思いを乗せ、250人のメンバーが輝きを放つ発表会は、11月9日午後3時に静岡県菊川市の菊川文化会館アエルで開かれます。