今や私たちの生活に欠かせないスマートフォン。電話やSNS、動画やゲームなど一日中手放せないという人も多いのではないでしょうか。こういった「スマホ依存」ともいえる生活は、大人だけでなく子どもたちの間にも広がりつつあります。

2025年1月にモバイル社会研究所が発表した調査によると、関東地区の小学校高学年のスマホ所有率は52%、中学生では87%にのぼり、いずれも年々増加傾向にあります。

「寝る直前のスマホは肌に悪い」「睡眠の質が落ちる」といった声も聞かれる中、スマホの使い方次第で子どもたちにどんな影響があるのかを小児科専門医で神経(脳)科学研究者の出口貴美子医師に聞きました。

出口医師:「キーワードは、メラトニンの分泌、光、音の3つです。子どもは脳が発達する過程で睡眠の質と量が重要ですが、寝る前のスマホは『百害あって一利なし』でしょう。大人も子どもも良質な睡眠環境を作ることが重要です」

スマホのブルーライトと睡眠ホルモンの関係

出口医師:「スマートフォンから発せられるブルーライトは、脳内のメラトニンという睡眠ホルモンの分泌を抑制することが多くの研究で示されています。また、スマホでのSNSやゲームによる心理的な刺激が覚醒度を高める要因にもなります」

メラトニンが減少すると入眠が遅れやすくなり、睡眠の質も低下しがちに。寝る直前のスマホ使用が睡眠時間の短縮や、睡眠の断片化に関連しているという研究結果も報告されています。

子どもへの影響は大人よりも深刻

出口医師:「子どもにはより顕著な影響が報告されています。特に5歳以下の子どもで、夜間のスマホ使用が睡眠の連続性や総睡眠時間の低下と強く関連していることが明らかになっている研究もあります。さらに、小中学生を対象にした研究では、夜のスマホ利用が睡眠の質の悪化だけでなく、日中の集中力や注意力の低下も指摘されています」

大人に関する研究では子どもほどの顕著な影響は報告されていないものの、睡眠への影響は決して小さくないとして警鐘を鳴らしています。

出口医師:「寝る直前のスマホ利用は入眠までの時間を長引かせ、睡眠の満足度を下げる傾向も報告されているため、大人もスマホの使い方に注意が必要です」

寝る前のスマホ利用は何分前までなら大丈夫?

出口医師:「複数の研究が、寝る1時間前にはスマホやタブレットなどのスクリーンデバイスの使用を控えることが推奨しています。2024年の研究によると、寝る直前のスクリーン使用は睡眠時間の短縮だけでなく睡眠の質の低下とも関連しており、最低でも30分~1時間前には使用を終えるのが望ましいとしています」

夏休みこそ寝る前のスマホ使用のルールを!

夏休みは夜遅くまでスマホに夢中になることも多いかもしれませんが、『寝る前1時間はスクリーンをオフにする』など、家族でルールを決めるだけでも睡眠の質の改善につながりそうです。

《参考文献》・Exelmans&VandenBulck,2016・Staplesetal.,2021・Johanssonetal.,2016・Jahrami,2023・Brosnanetal.,2024・Pickardetal.,2024《出口小児科医院・出口貴美子院長》2006年より出口小児科医院院長。2012年から慶應義塾大学医学部解剖学教室非常勤講師、2019年からは日本大学医学部小児科学系非常勤講師を務める。