日本を代表する脚本家、倉本聰さん。90歳となった今も、北海道富良野市に拠点を置き、その創作にかける意欲は決して衰えることがありません。
数々の作品群の中で、人気シリーズの『北の国から』(フジテレビ)や、昭和のテレビドラマ史における傑作と知られる東芝日曜劇場『幻の町』(北海道放送)には、倉本さんが戦時下を過ごした疎開先での記憶や体験、家族との絆が色濃く反映されています。

倉本聰さん
「“柿本のひっちゃん”っていう僕がそのころ、世話になった兄貴格の人がいましてね」
「『北の国から』をやった時に岩城滉一が演じた“北村草太”っていうのは、どうもそれがモデルになっている気配があるんです」
『北の国から』シリーズの登場人物で、特に人気が高い“北村草太”。

名優・岩城滉一さんが演じた、純と蛍の成長に寄り添う“草太兄ちゃん”という役は、疎開先で倉本さんが出会った実際の人物から、ドラマという創作の世界に立ち上がったといいます。

倉本聰さん
「“戦争は犯罪である”ということを親父が書いちゃうんですよ。それが見つかって、それで留置場に入れられちゃったらしいんです」
倉本さんの父親・山谷太郎さんは、戦時中、特別高等警察(=特高)に連行され、厳しい取り調べを受けた経験があるといいます。
クリスチャンだった父親が、教会の月報に寄せた記事の中で、“戦争は罪悪である”などと記した一文が、問題視されたのです。

倉本聰さん
「特高に志願する者一歩前って…もう僕ら凍り付いちゃったわけです。戦争反対なんて口が裂けても言えなかったし、嫌な時代でしたね」
子どもたちを巻き込み、信仰の自由さえ許さず、監視と統制下に置いた“あの時代”―。

倉本聰さん
「僕ら生き残りの時代の人間がしゃべることで、なにか考えるきっかけに多少でもなればいいと思う」

今年6月、北海道放送とRSK山陽放送が行ったロングインタビューで明かした、戦後80年に寄せる倉本さんの思いです。

その言葉の一つ一つを辿ることで、普通の人々の日常が、次々に奪い去られていった時代が浮かび上がります。
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