1億5000万円あまりの使途不明金が発覚している山口県の周南市文化振興財団。裁判所は、詐欺などの罪に問われた元職員の男(57)に懲役1年10か月の実刑判決を言い渡しました。(求刑:懲役3年)黒のジャケットにカーキのTシャツ、ジーンズ姿でまっすぐ前を向き判決を聞いた男。これまでの裁判で語ったことを振り返ります。

詐欺と窃盗の罪で判決を受けたのは、周南市文化振興財団でイベント企画などを担当していた元職員の男です。判決によると、男は2023年5月、使途不明金に関わった疑いがあるとして財団から休職処分を受けている間、集金と偽ってコンサートのチケットの委託販売先2か所からあわせて29万円あまりをだまし取りました。また、2024年3月には、知人女性のキャッシュカードを不正に使用して現金75万円を引き出し、盗み取りました。

男は詐欺について、集金した事実は認めたものの「休職と言われたときに退職を決意し、退職までに自分にできることをしようと思った。すべての集金が終わったあとで財団に納めるつもりだった」などと話していました。また、キャッシュカードなどの窃盗については「被害者に許可を得て、金を借りるために預かっていた」などとして、起訴内容を否認していました。

これまでの裁判で、男は30年以上にわたって多額の金を競馬に使っていたことが明らかになっています。財団の調査によると、2017年2月から2024年1月までの競馬関連の送金合計額は2億6130万7075円。この間の収支は1億3861万9945円の赤字だったといいます。今回、罪に問われた詐欺や窃盗で得た金の一部も、競馬用の口座に送金していました。自分の給料や借り入れ、親の遺産などを競馬につぎ込みましたが、生活費が足りなくなることもあったといいます。

裁判で男は「何度も競馬をやめようとしたが、断ち切れなかった。負けを取り戻そう、次は絶対勝てると思い込んでしまった」と語りました。

29日、地裁周南支部で開かれた判決公判。森幸督裁判官は「犯行は被害者らの信用や信頼につけ込んだもので悪質。被害額の一部は競馬に費消されていて、動機に酌量すべき点は見当たらない」と指摘。「動機について述べる内容も不可解で、反省の態度を真摯なものとは評価できない」として、求刑懲役3年に対し、懲役1年10か月の実刑判決を言い渡しました。

周南市文化振興財団をめぐっては2023年5月、コンサートチケットの売り上げ金など1億5000万円あまりの使い道が分からなくなっていることが発覚しました。今回の刑事事件とは別に、財団は、男と元経理担当の男(有印私文書偽造・行使の罪で有罪判決)に対し、1億6000万円あまりの損害賠償を求める訴えを起こしています。