今年20周年をむかえる人気の舞台「お笑い米軍基地」。14日(土)からはじまった新作公演では、これまで扱ってこなかった題材に、あえて、ツッコミを入れます。新作コントに 込めた思いとは……。
(コントの1シーン)
▼基地反対運動をする人
「行かんといけない。もう最悪」
▼若者
「おじさん、さっきから『時間ない、時間ない』と言っているけど、このあと何かあるわけ?」
▼基地反対運動をする人
「私はこのあと、カデナ・カーニバルに遊びに行く」
▼若者
「アイエナー」
県民にとって、反戦・反基地のイベントに参加するのも、基地内のカーニバルに出かけるのも、ごく日常の出来事です。でも一歩引いてみると、なにか変でおかしい。それを基地問題に対する立場の違いで何も言えなくなるより、おかしな沖縄を一緒に笑い飛ばそう。
▼患者
「僕の、僕の病気は何ですか?」
▼医師
「小波津さん、あなたの病気は……」
「ゴ―――(米軍機の爆音でかき消される)」
2005年にはじまった「お笑い米軍基地」は、爆音やオスプレイなど、沖縄ならではの要素を、笑いに変えてきました。
▼お笑い米軍基地 小波津正光さん(企画・脚本・演出)
「お笑い米軍基地を続けられるということは、それだけ問題が転がってるからネタが作れちゃう。一番いいのはお笑い米軍基地で、ネタにする題材がなくなること」
脚本・演出は、お笑い芸人のまーちゃんこと、小波津正光さんです。2004年、沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事故をきっかけに舞台を企画してから、今年で20周年。新作では戦後80年の節目にあわせ、これまで扱ってこなかった題材に挑戦します。それは……
▼お笑い米軍基地 小波津正光さん(企画・脚本・演出)
「タイトル言いますけど『シュウダン・ジケツ』。集団自決をコントにします。多分皆さんそういうリアクションになると思うんすよ。でも実は20年前、僕らが『基地をコントにします』と言ったときみんなそういうリアクション。基地をお笑いにするの?沖縄国際大学のヘリ事故を僕がコントにします、へ?それ笑える?っていうことを僕らは実はずっと20年やってきた」
家族に手をかける"おかしさ" 今の感覚でつっこむ
▼父
「はい、じゃあ、みんないるということで、じゃあ早速死のうか」
▼子ども
「はぁ?!」
▼父
「あれよ、死ぬと言っても、お父さんひとりで死ぬわけじゃ無いよ。家族みんなで死のうねっていう話よ」
▼子ども
「なんでよ」
「なんでそんな急に、いきなり死なんといけん?」
▼父
「なんでって、アメリカ―が上陸してくるからさー」
沖縄戦が始まる前、「米軍の捕虜になったら女は強姦され、男は戦車の下敷きになって殺される」などと、残虐な扱いをされると教え込まれていた住民たち。地上戦が始まると、米軍に投降できず、「集団自決」に追い込まれた人たちもいました。当時の誤った教育が、沖縄各地で多くの犠牲を出しました。
新作の舞台では、父親が家族に手をかけようとする状況の「おかしさ」にツッコミを入れます。
▼お笑い米軍基地 小波津正光さん(企画・脚本・演出)
「これって渦中で見たら、その中にいたら悲惨。まさに悲劇。だけど、80年経って、客観的にいま見たときに、ツッコミどころ満載。そうじゃん。『アメリカが上陸してくる、みんなで死のう』なんでよ。どんなやって死ぬ。『父ちゃんがひとりずつ殺していくから』なんでよ、何で殺されんといかんばー。あのときの状況を、僕らが今の感覚で突っ込みながら、中身が進んでいきます。それで笑えれば、多分あの時代はおかしかったんですよ」
戦後80年たった今だからこそ挑戦できるコントです。
▼お笑い米軍基地 小波津正光さん(企画・脚本・演出)
「僕らのコントは、世の中のことを客観的に見る装置だと思っているんです。沖縄で起きてることや、世の中で起きていることを大げさにして、ただ舞台にのせてるだけだから、それでみんなが『笑える』『笑えない』どっちだというだけの話なんすよ。それで笑うことができたら、多分おかしさに気づく。いろんな意味で、いろんな矛盾に気づく。芸人としてはいつまでも続けばいいと思っているけど、沖縄の人間、ウチナーンチュとしてはもう早く終わった方がいいと思っている。そこも矛盾している。だからコメディだと思ってます。だから僕の中にも矛盾がある。でも僕が矛盾しているからお笑い米軍基地が成立するという、それこそやっぱり人間ですよ。俺自身も笑ってくれっていう、そういうコメディです」
新作コント「シュウダン・ジケツ」は、戦争に対してツッコむあるセリフで締めくくられることになっています。
小波津さんはそのセリフに観客が共感してくれるかどうかがひとつのチャレンジだと話していました。
今月14日から始まったお笑い米軍基地の新作公演。那覇市では満員で上演され、沖縄市公演はすでに完売。月末の名護公演には若干、席があるそうです。
【お笑い米軍基地 2025】
開場:名護市民会館大ホール
日時:6月29日(日)午後2時15分開場 午後3時開演