映画やドラマには、ベッドシーンなど性的な描写が含まれるシーンがあります。今こうした撮影では俳優が“望まない演技”を強いられることがないように対策が進んでいます。撮影現場で俳優を守ってくれるのは「インティマシー・コーディネーター」という専門スタッフです。今、日本にいるのはわずか二人。どんな仕事なのか。初めてカメラが密着しました。

■俳優の心と体守る「インティマシー・コーディネーター」とは

8月の都内某所。ある連続ドラマの撮影が行われていました。


現在放送中のBS‐TBS『サワコ~それは、果てなき復讐』(毎週日曜夜放送)。
電子コミックをドラマ化したラブホラーサスペンスで、主人公のサワコ役を趣里さんが演じるなど、今注目の若手俳優が出演しています。

性的な描写も多いこの作品では、ある専門スタッフが活躍していました。


浅田智穂さん。職業「インティマシー・コーディネーター」。いわゆる“ヌード”や性的描写があるシーンの撮影で、監督の見せたい演出を最大限生かしながら、俳優の心と身体の安心・安全を守る、いわば監督と俳優の“仲介役”です。

インティマシ―・コーディネーター 浅田智穂さん
「(俳優から)不安を事前に取り除けたから、すごく芝居に集中できたと言ってもらえると、私はそこを求めているので」

浅田さんの現場に取材カメラが入るのは初めてのこと。俳優や制作側の協力が得られたことから、特別に取材が許されました。

まず撮影に入る前に、監督と台本の打ち合わせを行います。


インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「ページ12で『健介じっとサワコを見つめ、そして頬に触れる』から始まるんですよね。『胸元を見てしまって』とか。これはいつものいわゆるキャミソールみたいな感じ?」

監督
「そうです。下はもちろんブラジャーしてて全然いい。ブラジャー越しの胸の谷間というか、そういうのが感じれればいい」

インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「これは衣装合わせ終わってます?」

監督
「衣装合わせ終わってます」

インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「じゃあちょっと確認しますね」


実は、ドラマの台本は一般的に筋書きだけで、衣装や細かい俳優の動きまで書かれていません。監督と俳優の間に力関係が働く場合もあることから、浅田さんが間に入って事前にすり合わせることが大切なのです。


インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「もっと胸を触って欲しいとか・・・」

監督
「いやいやいや全然」

インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「いや何か『喘ぎ声が漏れ始める』なのでもうちょっと・・・」

監督
「この辺を優しくゆっくり・・・。でも・・・俳優部に胸を触っていいか、キスの中で乳を行くのがやっていいのか確認していただけると助かります」

インティマシ―・コーディネーター 浅田さん
「わかりました」

監督から聞き取った内容は、撮影日より前に俳優本人に確認を行います。