6年前、大分県佐伯市の海運会社に勤務する男性が自殺したのは、上司からのパワハラなどが原因だとして男性の両親が会社や上司らに損害賠償を求めていた裁判。福岡地裁は19日、自殺との因果関係を認め、会社と上司に6600万円あまりの支払いを命じました。
自殺した男性の両親が訴え
この裁判は、大分県佐伯市の海運会社「福永海運」に勤務していた瀧本明範さん(当時30歳)が2019年に自殺したのは、時間外労働による過労や職場の上司から送られた不適切なメールが原因だとして、瀧本さんの両親が、会社や上司らに損害賠償費など約6800万円の支払いを求めていたものです。
業務と自殺との因果関係認める判決
19日、福岡地裁の林史高裁判長は、瀧本さんの自殺と、業務や上司からの不適切なメールとの因果関係を認め、「福永海運」と当時の上司1人に合わせて約6600万円の支払いを命じました。
上司のメールは「業務上の必要性なく不適切」
判決によると、瀧本さんの上司は「ナマケモノの態度を改めなければあなたを必要とする理由が見当たりません。猛省してください」「手抜きにも程があります」「貴方にも後輩が出来ました。追い越されない様によ~く考えて下さい」などのメールを送信しました。
これらのメールについて判決は、「このような表現を用いたことに業務上の必要性がなく、社会的相当性を欠く不適切なもの」で「人格を貶める表現」だと指摘。
時間外労働・休日の電話対応で「心理的負担」
また、瀧本明範さんは、亡くなる前1か月の時間外労働が43時間あまりに及んだほか、帰宅後や休日も電話連絡などの対応を求められ精神的緊張を強いられ、「質的にも量的にも相当程度の心理的負荷を生じさせた」と判断しました。
その上で、瀧本さんは、業務によって精神障害を発病し自殺に及んだと認めました。
父親と弁護士が会見

判決後に会見した原告側代理人の光永享央弁護士は「労働の相談で最も多いのはパワハラ事案だが、民事訴訟で勝訴するのは難しい。この裁判の結果が労働環境に良い影響を与えてほしい」としています。
また、原告である瀧本さんの父親は「(会社内で)人を人と思わないパワハラに満ちたようなことが当然となっているのは残念。今後、海運を支えていく人たちが二の足を踏まないようにしてほしい、そうしないと我が息子の命は無駄になる」と涙ぐみ話しました。
労災認定も
瀧本さんの自殺については、佐伯労働基準監督署が2021年、労働災害に認定しています。