50歳で手足に力が入らなくなり障害認定された男性が直面したのは、仕事ができないもどかしさでした。同じ障害がある人の働く場をつくるために取り組んだのが、荒れた農地を再生したイチジク栽培です。自身の経験を基に「農福連携」を目指します。

◆5店舗経営の社長業から農家に転身

福岡県西部の糸島半島。美しい砂浜と豊かな緑に囲まれています。ここでイチジクの木の手入れをしているのは高木教光さん(72)。25年前に移住してきました。新たに生えた芽を見ながら話します。


高木教光さん「これは大きくなれないね。ひこばえなんですけど、全部切ってあげないと」

ずっと農家だったわけではありません。もともとは家業のガソリンスタンドを継いで、福岡市近郊で5店舗を経営していました。その後50歳になった時、病魔に襲われました。業務を続けられなくなり2001年に事業を清算。1年ほどのリハビリ生活を経ても、左の手足に思うように力が入らず障害認定を受けました。

高木さん「30人以上の社員を抱えて20億からの商いをしていました。突然、左手左足が動かなくなったんです。脳梗塞の疑いがあり強制入院です。障害者になり仕事がなくて困ったんです。ビジネスとして障害者雇用も受け入れられるように基礎作りをしようと思いました」

以前から土いじりが好きだったという高木さんが、福の浦地区で農業に取り組み始めたのは4年前でした。その頃の畑は今と似ても似つかない有様でした。