ノーベル賞ウイークだ。RKB報道局の神戸金史解説委員がたまたま友達になった女性は、東京生まれ・東京育ちだが、日本ならではの複雑な国籍・戸籍制度のせいで、日本国籍も戸籍も持たない。生活上で使っている名前は漢字表記だが、本当はアルファベットなのだ。国籍を考える貴重な例として、10月4日のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で紹介した。

◆ノーベル賞「日本人何人目」どこか変!?


今週はノーベル賞ウイークです。10月3日は生理学賞・医学賞が発表となりました。毎年このシーズンになると、日本人の誰かが受賞するのではないかと、非常に注目されます。その「日本人」とはどんな人のことを言うのでしょう?

昨年受賞した真鍋淑郎さんは、記者会見で「なぜ国籍を変えたのですか」という問いに英語で答えました。「日本では人々がいつも他人に迷惑をかけまいと気を遣う。私は他の人と調和的に生活することができないんです」。会場では笑いも起きていました。

冗談で言っていますが、実はそうではありません。日本人が海外で暮らす時、自分の意思で他の国の国籍を取る場合、日本の国籍ははく奪されてしまう「国籍法」があるんです。だから、真鍋さんはアメリカで研究を続けていくために、自分の意思でアメリカの国籍を選び、日本の国籍を捨てるという選択をしたということなんですね。

真鍋さんは「28人目の日本人受賞者」と紹介されましたが、正確に言えば米国籍。「日系アメリカ人」のシュクロウ・マナベさんが受賞したということになります。真鍋さんが「日本人何人目」という表現ができるのだろうかという疑問を感じていました。

文学賞を取ったカズオ・イシグロさんは、生まれは日本で、イギリスで育ち、母語としては英語を選んでいます。日本語よりも英語で会話をするし文章も書くし、名前も漢字表記ではなくてカタカナ表記をされています。NHKがノーベル賞ウイークで特設サイトを作っているのでのぞいてみると、カズオ・イシグロさんの名前はない。どう線を引いているのか、よくわかりません。

◆「“国籍はく奪条項”は違憲」 訴訟にも


ドイツと日本の「ハーフ」とおっしゃっているサンドラ・ヘフェリンさんというコラムニストがいます。昨年真鍋さんが受賞した時に彼女が書いていたコラムが気になって、保存しておいたんです。「真鍋さんは米国籍のアメリカ人ですよね」と。実は、国籍をはく奪されるという国籍法の条項が違憲ではないかと裁判も起きている、と紹介しています。