江戸時代から続く北アルプス立山での信仰儀式の一つ、女性たちが極楽往生を願う、「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」。25日富山県立山町の芦峅寺(あしくらじ)で5年ぶりに開催され、参加者は朱塗りの布橋を渡り立山信仰の世界に浸りました。

江戸時代、霊山・立山への入山を禁じられていた女性たちが極楽往生を願い白い布を敷いた橋を渡る儀式、布橋灌頂会。

3年に一度おこなわれてきましたが、新型コロナの影響で、2019年以降から実施が見送られてきました。

そして25日、5年ぶりに行われ、県内在住の女性31人が参加しました。閻魔堂内での懺悔の儀式で現世の罪を拭い去り心身とも清める女人衆(にょにんしゅう)。

白装束を身にまとったまま目隠しをした状態に。旅支度を終えると僧侶に導かれ、現世の幸せと来世の極楽往生を念じながら前に進みます。その先にはこの世とあの世の堺とする朱色の布橋。

引導衆と来迎(らいごう)衆の僧侶が橋の中央部に集まり、橋渡りの儀式を行います。

来迎衆:
「お迎えにまいりそうろう」

引導衆:
「お引渡しそうろう」

橋を渡り帰ってくることは一度死んで生まれ変わることを意味します。女人衆は煩悩の数と同じ108枚の橋板を一歩一歩踏みしめ、それぞれの心と向き合いながら長さ45メートルの橋を渡りました。

その後、雅楽に導かれながら遥望館(ようぼうかん)へ。死後の世界とされる暗闇の中で目隠しを外し、光が差し込む中、参加者たちは立山に向けて手を合わせていました。

参加者:
「65歳なんです。その区切りというか、ぜひ一度参加したいと思いまして、心洗われる感じがしました」

参加者:
「神々しいというか、清々しいというか、いつも見ている立山ですけど、違った感じに見えます。暗闇からだったので眩しかったというか、気持ちも違いましたし」

今年は新型コロナ対策として観客を入れず参加者は富山県内在住者に限定しました。関連イベントも取り止めましたが、次回の開催となる来年は日本各地だけでなく世界から参加者を募りたいとしています。

立山町 舟橋貴之町長:
「地元の人にとって誇りとなる布橋灌頂会を存続させなければいけない。ですから、町を挙げて応援しなえればいけないと思っています。5年前は外国人の方も参加していた。そういう意味では日本の文化に親しんでいただいて、そして世界に発信できればと思っています」