▼遺族の弁護士が被告に問う「愛する人を失うということがあなたに分かりますか」
この裁判では被害者参加制度が採用されました。検察官による質問の後、遺族側の弁護人による被告人質問が始まりました。
遺族側の担当弁護人は予定された開廷時間がすでに残り10分を切っていたことから、「時間の関係があると思うが、今日この場に立つことを2年待った。時間超過を許していただきたい」と裁判長に求めたあと、直接被告に質問を投げかけました。

遺族側弁護士:(女性A)さんがどんな人物だったか知ろうとしましたか
「そのへんのところはやれていません」
遺族側弁護士:今ここにいる(女性A)さんの家族は、愛する人の命を奪った人はどんな人間なんだろうと、知りたくもないのに知らないと前に進めないから、今日ここにいる。それが分かりませんか
「分かります」
遺族側弁護士:それが『行動に移す』ということではないですか。『申し訳ない』という気持ちから被害者のために自らとった行動はなにかありますか
「正直ありません」
遺族側弁護士:先ほど示談がうまく進んでいないという話がありました。これまで、ただの一度も保険会社からもあなたからも会社からも賠償したい、示談したいという希望を聞いたことはありません。示談したいとか賠償したいという気持ちを伝えたこともないのではないですか
「そんなことはありません。保険のことは保険会社がっていうこと、話がまとまってないとしか聞いていなくて」
遺族側弁護士:(女性A)さんの自宅を訪ねたことがありますね。自宅でまともな謝罪をしていませんよね
「あのときは大きい事故、最悪な事故を起こしたということが毎日毎日忘れることもできず、日にちも経っていないということで…反省していないといわれても本当に申し訳ない、目を見て話すことができていませんでした」
遺族側弁護士:社長が謝罪文を書くよう話をしたとあったが、(女性A)さんの遺族にはそんな手紙届いていません。これは出したのですか
「出していないです」
遺族側弁護士:事故後に1度、(女性A)さんの自宅を訪ねた以降、今日までの間にあなたがしたことは、昨年(2023年)の11月24日に何の連絡もなく手紙も添えることもなく、花だけ突然送ってきたことだけですね
「はい」
遺族側弁護士:なぜ、花には謝罪の文言や突然の連絡をわびるようなことが書かれていなかったんですか。それも会社と話し合って決めたんですか
「違います。それは僕がやってませんでした」
遺族側弁護士:この行為がどれほど遺族を傷つけたか想像できますか
「はい」
遺族側弁護士:1年も何の連絡もなく、しかも命日の2日前に、何の意味で送ってきた花か分からないじゃないですか、遺族からすれば「花だけ贈っていれば体面がとれるだろう」と受け止められる。そういう安易な考えで花を贈ろうと社長から指示されたんじゃないんですか
「本当にそういうことはないんですけど、行動に示せてないから…」