障害のある人の表現活動やその支援に注目するシリーズ「つくるくるくる」です。
文字を打ったりデザインに使う活字の集まり「フォント」、明朝体やゴシック体などいろいろな字体がありますが、県内の障害のある人たちと作る富山ならではのフォントが誕生しようとしています。
一般社団法人シブヤフォント 磯村歩共同代表:
「このスーツなんですけど、これシブヤフォントの柄になっています」「こういった傘ですね。ABCDEFGってシブヤフォントのあるフォントを採用いただいた」
2016年に東京・渋谷区で誕生した「シブヤフォント」。障害のある人が書いた文字を「フォント」にデザインして、看板や数々の商品として世に送り出しています。
文字だけでなく、障害のある人が描いた絵はいろいろな柄に。
フォントや柄は、これまで50社以上の企業に採用され300種類を超える商品になりました。
このプロジェクトを立ち上げたのがデザイナーで一般社団法人シブヤフォント共同代表の磯村歩さんです。
一般社団法人シブヤフォント 磯村歩共同代表:
「誰にとっても魅力的なものに変えていくのがデザインだと思うんですが。文字だったりちょっとした絵とかだったりでも、ぐぐっと引き上げられる」
「シブヤフォント」では、障害のある人の文字や絵を専門学校の学生がデザイン化していて、この絵は手が震える障害のある人が学生と一緒に渋谷のビルを描いたものです。
一般社団法人シブヤフォント 磯村歩共同代表:
「学生はこのビルを感じたときに生命力を感じたみたい。それでなんかこうビルがにょきにょき生えているっていうそういう柄に」
デザインの力で文字や絵の魅力を引き出して、個人や企業が利用しやすいようにデータ化。売上げの一部は福祉施設に還元される仕組みです。
ことし7月、「シブヤフォント」から磯村さんとアートディレクターのライラ・カセムさんが富山にやってきました。
「シブヤフォント」の仕組みを全国へ広げようという「全国ご当地フォント」のプロジェクトのためで、フォント作りに取り組む5つの地域の一つに富山が選ばれました。
シブヤフォント アートディレクター ライラ・カセムさん:
「東京とは違ってとよく言うんだけど、いっぱいいいものある。むしろ地域だからこそ人と関われるチャンスも多いし。そういう風にデザイナー自身にもワクワクしてほしい」
富山のご当地フォントは、専門学校生ではなく、地元の2人のデザイナー山口久美子さんと門嶋隆祐さんが担当します。
デザイナー 山口久美子さん:
「(障害のある人の)すばらしいアートはたくさんあるんだけど、どう社会とつなげたらいいかわからないっていう悩みがあって、誰でも使えるような仕組みするっていうその仕組みがすばらしいなと思って。がんばらねばと思いました」
南砺市の多機能型事業所「花椿かがやき」。
デザイナー 山口久美子さん:
「みなさんで絵描きましょうね」
シブヤフォント アートディレクター ライラ・カセムさん:
「描きたいもの、好きなものを描く。わからない時はここにいっぱい写真があります」
富山ならではの「ご当地フォント」を作るため、デザイナーたちが元になる作品を探しに事業所にやってきました。
富山の特産や風景写真を見ながら利用者のみんなが思い思いに絵を描きます。
普段自分の部屋で一人で作業をするのが好きな人も。
デザイナー 山口久美子さん:
「お寿司だね。あ、わかったこれお米だ。いい」
普段はにおい袋作りをしている影近美穂さん。デザイナーが加わったいつもと違う環境で、新たな表現の可能性が引き出されました。
シブヤフォント アートディレクター ライラ・カセムさん:
「美穂さんの見てる世界は面白いね。これからもどんどんいっぱい色使おうね、絶対素敵になるから」
柄の候補は次々と仕上がってきますが、肝心のフォントはというとー。
デザイナーの目に留まったのは球団のマスコットなどを刺繍した味のある刺し子の作品。
花椿かがやき管理者 坂田佳永子さん:
「細かかったよね、これね」「これは誰に見せますか」
境仁志さん:
「お父さん」
花椿かがやき管理者 坂田佳永子さん:
「お父さんに今度会った時に見てもらおうねって、一針一針丁寧にやってるんじゃないかなって思って」
シブヤフォント アートディレクター ライラ・カセムさん:
「シブヤフォントも300ぐらいやってますけど、一つ一つにストーリーがある。それがやっぱり大事っていうか」
シブヤフォント アートディレクター ライラ・カセムさん:
「お父さんフォントでいいじゃない」
デザイナー 山口久美子さん:
「お父さんフォント!」
富山の「ご当地フォント」に採用が決まったのが境仁志さんの刺し子です。
毎日一針一針細かなタッチで作品作りに取り組んでいて、今は「ご当地フォント」のためにアルファベットを縫っています。
小文字はすでに仕上がりました。
残りはアルファベットの大文字で、データ化の締め切りは迫っていますが、自分のペースは崩しません。
フォントにはもう一人、定村晴美さんの刺し子も一緒に使われる予定です。
それぞれ自分のペースで一針一針進めています。
花椿かがやき管理者 坂田佳永子さん:
「自分たちのいつもやってることを発信できるっていうことは、それが叶ったら自信にもつながるだろうし、うれしさであったりあったかい気持ちになりますよね」
刺し子の完成を待ちながら、デザインを担当する山口さんも、現在急ピッチで仕上げ作業を進めています。
デザイナー 山口久美子さん:
「刺している境さんも大変だと思うんですけど、起こす方も結構手間がかかるとというか」
フォント化するため境さんの粒のような縫い目を一つ一つ取り出しています。
デザイナー 山口久美子さん:
「たぶんこれ縫い目とかなんでしょうね、こういうのもちゃんと生かして、aがすっごいがんばってコミコミなんですけど。本当にコツコツした地道なフォントなんで富山ならではって言われたら本当にそうだなって」
影近さんの花火など3人の作品を合わせた柄も。
デザイナー 山口久美子さん:
「海のイメージ、緑があって山があって空があるっていう、地層みたいなものが表現できたら面白いかなって思って、みんなのを組み合わせて作ってるんですけど」「何とか形にしたいなってみなさんの思いを。喜ぶ姿とか想像するとがんばれるなって」
みんなの作品がデザインの力で富山ならではの柄へと生まれ変わっています。
「ご当地フォント」は、ことし12月渋谷でお披露目された後、ダウンロード可能となります。
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