雨季を迎えた6月以降、平年の雨量を大幅に上回る大雨が続き、各地で洪水に見舞われているパキスタン。国土は日本の約2倍ですが、その3分の1が水没しています。これまで3300万人が被災し、1200人以上が死亡しました。なかでも農業の被害は甚大で、日本も輸入している綿花が壊滅状態だといいます。

■「こんな“モンスター”は経験したことがない」パキスタンの3分の1が水没


轟音をあげながら倒壊するホテル。氾濫した川の激流に押し流されてしまいました。濁流は街を飲み込む勢いです。

パキスタンでは雨季を迎えた6月以降、平年の雨量を大幅に上回る大雨が続き、各地で洪水に見舞われています。


パキスタン北部スワートでは、ボランティアたちがベッドのフレームとロープを使って、孤立した建物から住民たちを救出しています。

パキスタン シェリー・レーマン気候変動大臣
「現在、パキスタンの3分の1が水没していて、3300万人が被災しています。モンスーンは毎年やってきますが、こんな“モンスター”は経験したことがありません」


史上最悪レベルの洪水被害。その様子は衛星写真からもはっきりわかります。


パキスタンを流れるインダス川の周辺は水に浸かり、巨大な湖のようになりました。


畑が並ぶ大地は、濁流にすべて覆われました。


今回の洪水で数百万人が家を失い、災害当局はこれまでに1208人が死亡したと発表しました(1日発表)。

■綿花は壊滅状態 今後価格上昇も…

現地はいまどんな状況なのか。
最大都市、カラチで貿易支援に取り組むジェトロの山口さんに話を聞きました。

ジェトロ・カラチ事務所 山口和紀さん
「カラチのあるシンド州、パキスタンの南部ですけれども、この南部が非常に影響が大きくなっています。今年に限って言うと例年の4倍以上の雨が降っているというふうに気象庁は言っていますので」


なかでも大きな被害を受けているのが農業。
氾濫した川の水に浸かった畑がさらに泥に覆われ、復旧するまで時間がかかるといいます。

ジェトロ・カラチ事務所 山口和紀さん
「(果物の)デーツと綿花が壊滅状態だという報告がなされていましたので、かなり深刻だと思います。パキスタンの綿製品の日本への輸入は、綿糸は約30億円、綿布も約30億円という規模なんです。こういったものに今後影響が出るのではないかというのは十分考えられるところです。価格が上がるというのがまず考えられますね」


パキスタンに甚大な被害をもたらした豪雨。
原因はパキスタン上空に居座り続けた寒気です。そこへインド洋から湿った空気が流れ込み、雨雲が発達しやすい状態が続きました。
さらにインドからの暖かい空気がヒマラヤの氷河を溶かし、洪水被害が拡大していったのです。


パキスタンの気候変動大臣は、今回の災害の原因は地球温暖化だと明言しました。

パキスタン シェリー・レーマン気候変動大臣
「氷河が溶けるのは地球温暖化の結果です。パキスタンのCO2排出割合は世界で1%以下です。世界の気候を“生き地獄”にする、温室効果ガスの排出にはほとんど加担していません」