渡海先生の外科医的アドリブ
渡海先生は「このままもう縫ってっちゃうよ。外からいっちゃおう」と言って左心室の修復を行うのですが、これは、人工弁を先に取り出さないで人工弁をそのままにして心室の内側からでなく、外からフェルトを使用して修復してしまおう、という意味です。
このセリフは台本にはなく完璧に二宮さんのアドリブなのですが、不思議なことに本当の外科医のような、つまり状況を深く理解している上でないと出ないセリフです。こういったことが撮影では結構あって、アドリブで言うセリフが本当の外科医のようで正直ビビります。渡海が乗り移っているとさえ思ってしまうほどです。
左開胸での左室破裂修復、人工弁摘出(よーく見ると人工弁が折りたたまれて出てきています。人工弁に絡みついた左室の筋肉をメッツェンという外科ハサミではがしてさらに折りたたんで摘出するという神業!)、僧帽弁手術まで渡海先生はこなしてしまうのですが、この方法で修復する心臓外科の先生はいるのかな。とにかく、ここの場面の渡海先生の技術は卓越した技術であり、左室破裂の修復をするときの心筋へのファーストタッチを見ると、非常にデリケートで、さらに組織に触れていないときの糸裁きのスピードは神がかっていて、まさに悪魔的精緻を極めた手技と表現するしかありません。
心臓外科医の立場から見てもすごく興味深く、腹部大動脈瘤破裂という日常的に遭遇する病気もあれば、スナイプによる左室破裂という非常に未来志向の合併症を扱った第2話でした。第3話もマニアックで興味深い内容ですのでぜひご期待ください!
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イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科
山岸 俊介
冠動脈、大動脈、弁膜症、その他成人心臓血管外科手術が専門。低侵襲小切開心臓外科手術を得意とする。幼少期から外科医を目指しトレーニングを行い、そのテクニックは異次元。平均オペ時間は通常の1/3、縫合スピードは専門医の5倍。自身のYouTubeにオペ映像を無編集で掲載し後進の育成にも力を入れる。今最も手術見学依頼、公開手術依頼が多い心臓外科医と言われている。