「鹿児島県警トップの本部長が警察官による犯罪を隠ぺいした」
元幹部による内部告発が波紋を広げています。
一方、本部長は疑惑を全面否定しているものの、十分な説明をしていません。
鹿児島県警の内部で一体何が起きていたのでしょうか。
「寡黙で正義感の強い人」 ノンキャリアがキャリアを告発した事情とは

日本警察の父と呼ばれる、川路利良大警視。銅像が建っているのは、生まれ故郷、鹿児島県の警察本部前だ。
その鹿児島県警が、大きく揺れている。

きっかけは、本田尚志前生活安全部長が、警察官による盗撮事件が隠蔽されていたと告発したことだ。
先週行われた裁判所の刑事手続きの場で、事件の隠蔽を指示したのは、県警トップである野川明輝県警本部長だと証言した。

本田尚志 前生活安全部長
「枕崎のトイレでの盗撮事件が発生しました。枕崎署の署員が容疑者であると聞きました。
しかし、野川本部長は『最後のチャンスをやろう』『泳がせよう』と言って、本部長指揮の印鑑を押しませんでした。警察の不祥事が相次いでいた時期だったため、新たな不祥事が出ることを恐れたのだと思います。
本部長が警察官による不祥事を隠蔽しようとする姿にがく然とし、また失望しました」
本田前部長は、捜査情報を漏洩した容疑で逮捕されていた。

野川本部長は、東大卒・警察庁採用の「キャリア」。一方、本田前部長は、地元採用の「ノンキャリア」だ。
同じノンキャリアの県警OBが番組の取材に応じた。

鹿児島県警OB
「(本田容疑者は)寡黙で正義感の強い人だというところは話には聞いてましたよね」
圧倒的な力を持つ「キャリア」を叩き上げの「ノンキャリア」が告発するのは、やむにやまれぬ事情があったのではないかと推測する。
鹿児島県警OB
「本部長はもう絶対権力っていうのは持ってますよね。上げ膳据え膳っていうんですか?傷をつけないように実績をつけて、本庁(警察庁)に送り返してやると。正義感がはちきれんばかりの時であれば、ああいう手段しかなかった」
一方、野川本部長は、警察官による盗撮事件を隠蔽しようとした疑惑について、全面的に否定した。

野川明輝 県警本部長
「私が隠蔽を意図して指示を行ったことは一切ございません。また、事件認知時に、前生活安全部長が私のところに来た事実もございません」
食い違う、本田前部長と野川本部長の主張。どちらが正しいのか?時系列で振り返る。
野川明輝 県警本部長
「昨年の12月19日の事案認知後、ただちに管轄する警察署におきまして捜査を開始し、同月22日に報告を受けました私は、引き続き当該署において捜査を行うように指示し…」
盗撮事件が本部長まで報告されるのは異例のこと。犯人が警察官であると疑われていたからだ。

しかし、3か月経っても逮捕に至らないことから、本田前部長は県警を告発する覚悟を決めたという。
本田尚志 前生活安全部長(刑事手続き中の証言)
「この不祥事をまとめた文書を、とある記者に送ることにしました。マスコミが記事にしてくれることで、明るみに出なかった不祥事を明らかにしてもらえると思っていました」