井戸俊一裁判長は「殺意は強固、被告に非はあるが、30年経った後に脅されたことは汲むべき」

■女2人の弁護人、野澤被告の弁護人の指摘

・野澤被告は大学同期の女性と24歳で結婚、3人の子ども
・60歳の定年後も再雇用で教壇に立ち、70歳から年金で妻と2人暮らし
・教え子からは「一番厳しいけど、一番優しい」の呼び声
・不登校生徒と向き合い、不良グループを更生

・49歳の女は成績悪く、放課後に補習
・そのうち、女からのアプローチで性的関係になる
・「自分を最後に送って」「先生、大好きなの」「私を女にして欲しい」
・高3で性的関係は解消
・その後も女の息子のいじめ被害の相談、高校受験で家庭教師、病気の見舞いなど続ける

・2021年10月、46歳の友人から電話「覚えていますか?(49歳の女と)性的関係あった?」
・現金300万円脅し取られる
・2023年9月、46歳の友人から「300万は慰謝料、今回は病院代、ジャニーズのこともあるんだからね」
・「もう逃げられない、この苦しみから逃れられない」と思い、台所の千枚通しを手に犯行

■野澤被告への被告人質問

・(どのような教師だと?)非常に恐ろしい教師のイメージ、パンチパーマをかけていたので
・室蘭市で「一番厳しく、優しく、温かい教師」と言われていた
・非行の子どもとひざ詰めで話し合い、40~50人立ち直らせてきた
・49歳の女も、その1人
・2年生の定期テストで0点、かわいそうに思って放課後や夏休みに1年生の数学から教えた
・(性的関係になったのは?)※上記、弁護人の指摘と同じ
・高校の寮に暴走族の男を入れたことがあり、土下座して許してもらい、何とか卒業させた
・(その後の関係は?)※上記、検察と弁護人の指摘と同じ
・1回目の事件前までは身内、父親のような状態

・(良好でなくなったのは、いつ?)1回目の事件時から
・3~4年、連絡なかったのに、いきなり友人から性的関係の電話
・機関銃のように非難を浴びせられ、土下座して謝罪したが「謝って済む話ではない」と
・(300万円渡した時の心境?)老後の生活は厳しくなるが、これで解放されるなら良かったと

・(再度、電話が来た時は?)もの凄い不安と絶望。1回払ってしまうと、何回も請求されるんだと思った
・(2人が直接、来た時は?)殺さないとダメだと思ってしまった。妻や子ども、孫にも危害と思った
・台所に引き返して、とっさにつかんだのが千枚通しだった

・49歳の女を刺した後、46歳の友人に向かった
・どこを刺したかは、覚えていない
・逃げた1人を追いかけようとしたが、血圧が上がって苦しくなり、仰向けにひっくり返った
・妻の「パパ、何やってるの」の声が聞こえ、人生おしまいだ。ママ、急いで警察を呼んでくれと言った
・(2人への思いは?)すまないという気持ちで、勾留中、ずっと眠ることができなかった
・(妻や面会に来てくれた同僚、教え子への気持ちは?)「先生、待ってるよ」と励ましてもらった。ありがたいなと思います
・(恐喝の被害を届け出なかった理由は?)警察が相手にしてくれないだろうと思った。そもそも最初の過ちは私にあるから
・最後の電話で46歳の友人から「先生、ジャニーズの事もあるんだよ」といわれて絶望した
・ずっと、ずっと、長く脅されていくのだろうと思った
・もう逃げられない。怒りよりも、恐怖です。また脅されるんだという

■49歳の女の被告人質問

・自分が苦しんだことについて、先生に考えて欲しい気持ちがあった
・(金の配分は?)友人にはガソリン代、子どもたちのお菓子代として1万円

・(2022年に電話した時のやりとりは?)「もう、うちにはお金はないぞ。心臓の手術代も渡したんだから」
・(2023年、さらに電話の理由は?)ジャニーズの性加害問題が頻繁に出るようになって、辛くて…(泣き出して声にならず)
・(野澤被告側も辛く、圧力を受けたのを理解?)できます。本当に酷いことをした。友人も巻き込んでしまった

・(性行為は強要された?)強要されてないが、子どもだったので大人の圧があった。断れないような…
・(同意はしてた?)私からしたら不同意ですけど、怖くて言えなかった
・(性被害のフラッシュバックとかは、いつから?)鮮明に覚えてないが、30歳すぎてから
・酷くなってきたのは、40歳を過ぎてから
・(当時、嫌な気持ちは?)家に帰って、泣いていた

・(車で送迎してもらってた?)頻繁ではないですけど、片道1時間かかるので
・(嫌な先生に送り迎えは嫌じゃない?)本当に矛盾しているなと思います。“足”に使っていたという感じ
・(心筋梗塞で入院時、連絡とって見舞いに来てもらってますよね?)先生も心臓の病気があったので
・(その時、フラッシュバックはない?何とも思わなかった?)すいません…
・(30歳前後に精神科を受診、フラッシュバックは相談しなかった?)恥ずかしくて、言えなかった