5月のDLドーハとゴールデングランプリで標準記録突破の可能性

金栗記念の2種目出場を「セットで練習」と位置付けていた。直前まで出場を迷っていた田中に対し、田中コーチは「だったらダイヤモンドリーグもやめろ」と強く言ったようだ。田中は「スタッフの方たちと話し合って、最終的には(前向きに)向かって行けた」と明かした。

「800mは納得できる走りではありませんでしたが、ボロボロにはなりませんでした。(2種目を走って)今までやってきた練習を信じる手応えはつかめましたし、だからこそ、これからの練習をもっと頑張ろうと思うことができました」

田中が意識した“見せるレース”も、自身が負けてしまってはできたと言えないかもしれないが、高校生の久保との勝負である程度は果たせたのではないか。1500mでも高校生のドルーリー朱瑛里(16、津山高2年)の挑戦を受け、話題になった。

次は田中がパリ五輪代表入りを決めることで、陸上界は夏に向けて盛り上がっていく。昨年の世界陸上に入賞した5000mは、昨年中に参加標準記録(14分52秒00)突破済みで出場資格がある。日本陸連が設定した選考基準で、今季の標準記録突破ができれば代表に内定する。

1500mは標準記録(4分02秒50)突破かRoad to Paris 2024(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で五輪出場資格を得る必要があるが、Road to Paris 2024は安全圏と思われる。6月末の日本選手権3位以内で代表入りに大きく近づく。

「ダイヤモンドリーグ出場はまた父と相談しますが、ドーハ(5月10日)は5000mなので、気候がわからない部分もありますが、疲れを取って標準記録を狙って行きたいですね」

ドーハの次はゴールデングランプリ(5月19日・国立競技場)で1500mに出場する。参加する外国勢が未発表だが、メンバー次第ではこちらも標準記録突破が期待できる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)