那覇市の大嶺地区には「サングヮチー」と呼ばれる女性だけのお祭りがあります。独特なお供え物と女性だけで行う珍しい道ジュネー。その様子をカメラマンリポートでお伝えします。

女性たちが頭の上に載せているのは重さ3キロにもなる「シンムイ」と呼ばれる神様へのお供えものです。
毎年、大嶺地区では旧暦の3月4日を迎えた週の週末に、戦前から伝わる女性達のお祭り「サングヮチー」が執り行われてきました。
集落の女性たちと子どもたちの健康を祈願し、集落の無病息災を願う行事です。

朝8時。自治会の建物のなかに備えられた調理室に集まり、神様にささげるシンムイ作りをしているのは婦人会を中心とした大嶺地区の女性たちです。
シンムイの土台となる立派な大根を固定していく作業をにぎやかに進めていきます。
「(Qサングヮチーはどんな日なんですか?)女の節句といって、朝から女性が遊ぶ日なんです。夫に気兼ねしないで遊ぶ日。(じゃあ旦那さんはお家に置いて?)もちろん!」

もともと大嶺集落は現在の那覇空港の管制塔あたりにありましたが、戦中戦後を通して飛行場として接収されたため、集落の人々は現在の大嶺地区へと移住してきました。
大嶺自治会副会長・當間秀美さん「(旧集落は)海に面しているので、海と陸で半農半漁の生活を送っていた。この大嶺のサングヮチーもシンムイを持って、サングヮチーのモウアシビーみたいな感じでその名残がある」
婦人会長の上原さんも大奮闘です。ミーウマリ(集落に新しく生まれた子)のお祝いで備える赤まんじゅうを準備します。
大嶺婦人会会長・上原清恵さん「皆が協力してくれるのは本当にありがたいです」

いよいよシンムイづくりも完成に近づいていました。最後は子孫繁栄の意味を持つ黒木を大根のてっぺんに差します。何もない無の世界に形を作るという意味を持つ揚げ豆腐、そしてお祝いの紅色に染めた誕生を意味する卵。これらも子孫繁栄を意味しています。

大嶺自治会副会長・當間秀美さん「大嶺の元々ある文化を大事にしようという気持ちが強いんじゃないかと。それで今までずっと続いてると思います。色々な形で変化はしていくと思います。継続しながらね。変化はしていくと思いますけど、やっぱりその伝統を残しながら、また新たな方々の知恵も入れて、それで発展していけばいいかなと思います」

今年初めて参加するメンバーもいます。
浦添市から嫁いで2年目・赤嶺智美さん「班長になって初めて参加したので。全てがびっくりだらけでした」
読谷から嫁いできて始めての参加「私の地元でも、こういうものは無かったので全てが勉強です」

できあがったシンムイを頭に、集落の神様や先祖が祀られているカミヤーに届けます。
「今年のミーウマリ(新しく生まれた子ども)は男の子一人、女の子5人の6人です。この子達の健やかな成長を祈願し、ここに酒、シンムイ、ムイマンジュウを真心よりお供えいたしますので清らかにお受けとりください」

突然の大雨のなか、他の御獄を回ります。
御獄でのお祈りが終わるころには、願いが通じたのか雨が止みました。そしてシンムイとムイマンジュウを頭に奉納のカチャーシーです。
大嶺婦人会会長・上原清恵さん「みんなで楽しくサングヮチーができるということは良かったなと思っています。ずっと長く続けられますように、婦人会もますます発展しますように、そうなって欲しいと思っています」

そして、無病息災を願って行われる大嶺独特の女性だけで行う道ジュネー。

「晴れて良かったですね。本当、良かったです。私達の祈りが通じたのねきっと」「そうですね、普段の行いがよかったんですね。普段の行いがいいんですよ私達は」
伝統を守る女性たちの心意気が集落の未来を明るく照らし続けていきます。














