2018年に起きた奥田交番襲撃事件で、殺害された警備員、中村信一さんの妻が「県警の初動対応」に問題があったと訴える民事裁判が、9月29日に判決を迎えます。「夫は死ななくて済んだのではないか」と4年間の思いを抱え判決を迎えます。
殺害された中村信一さんの妻
「いざ何かあった時、それこそ住民、市民の方たちの安心安全は委ねられないなと。危機感をやっぱり表に出したくて警察にそういうところは改善していってもらわなければいけないというやっぱりそういう気持ちで裁判を起こしたんで。私の訴えが認められると信じてます」
民事裁判の判決を前に警備員・中村信一さんの妻が心境を語りました。
事件は2018年6月、元自衛官の島津慧大被告(28)が、富山市の奥田交番に押し入り、所長だった稲泉健一さんを殺害、奪った拳銃で奥田小学校で警備の仕事をしていた中村さんを殺害しました。

中村さんの妻
「(主人が)校門の前にいたもう一人の従業員(警備員)の方に何があったんでしょうかって確認に行ってるんですよ。凶悪な犯人がこの辺うろついてるという情報が入っていて安全な屋内に避難するように指示があるぞってなれば主人だって逃げてたと思うんですよ。パトカーで広報するだけでもずいぶん違ったと思うんですよ、あの時は」

【2021年6月】事件から3年後、中村さんの妻は警察の初動対応を明らかにするために県などを相手取り提訴。裁判では110番通報を受理した県警の通信指令課が適切に対応し警察が現場周辺で注意喚起していれば、夫が殺害されることはなかったと主張しました。
一方、県警側は、中村さんや近隣住民に危険が切迫していたことは認識できなかったと反論。「警告するには犯人の人相や逃走ルートを具体的に把握する必要があり通報から逮捕までの間では困難だった」と請求棄却を求めました。


中村さんの妻
「この裁判の大事さ必要性も少しずつ分かって頂けてきたのかなっていう思いは持っているのでこの裁判を起こしたこと自体に意味があったかなと」
警察の初動対応は少しずつ明らかになったものの、原告側が重要な証拠として法廷での公開を求めた「事件直後の110番通報の音声データ」は公開するには「適切な内容ではない」と認められませんでした。

裁判の証拠を集める中で、音声データを聞いた中村さんの妻は語ります。

中村信一さんの妻
「最初の頃なんてもしもし電話でれますか。おられますか。それの繰り返しなんですよ。それが延々と何分も続いてるんですよ。その何分って無駄な何分なんですよ。最初に危険を察知してしまえばすぐ指令が出せるはずなんですよ。住民の安全確保に関しては、一切指令が出てないというのも本当にその音声録音を聴けば分かることなんですけど」「それを証拠として公開法廷の場で流していただけなかったっていうのは残念でならない」
警察の初動対応が適切であれば「夫は死ななくて済んだのでないか」と4年間抱えてきた思い。裁判は29日判決を迎えます。
中村信一さんの妻
「主人が命がけでここはおかしいよって。警察に直すように言ってくれているんじゃないかと思うようになったんですよ判決の日を楽しみに待っててねと。今はそういう感じですかね」
音声データについては県警が去年7月、富山地裁に閲覧制限を申し立てたため閲覧が出来ない状態が続いていましたが、裁判所は1年以上が経った今月21日にこの閲覧制限を却下。判決が確定していないため、第三者は閲覧することが出来ないまま判決を迎えます。