処理水を海に放出する計画をめぐり、4日に報告書を公表したIAEAのグロッシ事務局長は5日、福島県内に入りました。自治体や漁業関係者などの会議に出席したのち、福島第一原発を視察しました。
グロッシ氏は5日午前、福島県いわき市を訪れ、地元自治体や漁業関係者との会議に臨みました。
冒頭、グロッシ氏は出席者に握手を求め、福島県漁連の野崎会長に対しては…。
野崎会長とグロッシ事務局長「サンキューベリーマッチ」
そして、あいさつの中で、監視を継続していく考えを強調しました。
グロッシ事務局長「IAEAは処理水の最後の1滴が安全に放出し終わるまで、福島に留まり皆さんと一緒に居続けます」
そして、グロッシ氏は「みなさんの疑問や懸念を解決できる魔法の杖を持っているわけではない」「約束できるのはみなさんと一緒に共存することだ」と呼びかけました。
会議は冒頭以外、非公開で行われ、参加者からは「科学的安全と社会的安心がイコールではない」という意見が出た一方で、グロッシ氏からは「処理水が安全ではないと言っているのは非科学的なことだ」と説明があったということです。

いわき市・内田広之市長「IAEAが今回示した報告にある知見を生かして、国と東電が地元の方々と意見交換や理解醸成をしっかり行ってもらいたい」
こうした中、原子力規制委員会は、5日の会合で、設備検査の合格を示す「終了証」を7日に東京電力に交付する見通しを明らかにしました。
一方、報告書を受けた岸田総理は4日、次のように話しました。
岸田総理「引き続き科学的根拠に基づいて国の内外に対して、高い透明性を持って丁寧に説明を行っていきたいと考えています」
報告書を受けて、政府は「夏ごろ」としている具体的な放出時期の検討に入りますが、県内外で反対の意見や懸念は残されたままで、今後はこうした声にどう対応するのかが焦点となります。
▼処理水 福島の葛藤
処理水の海洋放出に向け、準備が大詰めを迎えていますが、関係者の理解や風評への懸念など、課題は残ったままです。TUFでは、処理水をめぐる課題や現状をシリーズでお伝えしています。