郡山市日和田町に、昭和15年頃の創業から80年以上にわたり地域の食卓を彩ってきた鮮魚店があります。その名は「塩原屋魚店」。現在、店を切り盛りするのは3代目の稲村浩二さん。この道60年の父・武さんと母・つや子さんと共に、家族で店ののれんを守っています。父から受け継いだ伝統の「目利き」と、料理人として培った経験を融合させ、老舗に新たな風を吹き込んでいます。
父の背中から学ぶ、この道60年の「目利き」
塩原屋魚店の魚は、毎朝、武さんと浩二さんが市場で一緒に仕入れています。魚選びで大切にしているのは、鮮度と価格のバランス。浩二さんは「お買い求めしやすい値段と、もちろん鮮度を見ながら、そこの塩梅ですね。そのへんの目利きはまだまだうちの親父のほうがもう敵わないですね」と語ります。
父の武さんは、この道60年の大ベテラン。長年の経験から、魚に触れるだけでその状態や食感まで見極めることができると言います。「これしてみて、やっぱりおいしいなっていうのは判断つきますね。手触りもあるし、それで大体食感も分かりますよね」と、その確かな技について話します。
この自慢の目利きで厳選した魚を味わえるのが、店の名物「刺身の盛り合わせ」。その日に仕入れた新鮮な魚の中から、お客さんの要望に合わせて作られます。中には50年以上通う常連客もおり、「子どもたちが帰ってきたら、お刺身に決まってます」と話すなど、家族が集まる特別な日のご馳走として、長年地域の人々に愛されてきました。
料理人経験を活かした新たな挑戦
浩二さんは、子どもの頃から父の隣で魚を切る姿を見るのが好きで、いつも店にいたそうです。店は遊び場であり、学びの場でもありました。
高校卒業後は東京の専門学校で料理を学び、その後約10年間、飲食店で料理人として修行を積みました。およそ20年前に地元へ戻ると、その経験が店の品揃えに新たな彩りを加えることになります。
その一つが、ショーケースに並ぶ手作りの惣菜です。季節やその日の仕入れによって内容が変わるのも魅力。中でも一番人気なのが「自家製のさつま揚げ」。北海道産のタラのすり身に、にんじん、玉ねぎ、大葉を練り込んで作られており、ふわっとなめらかな食感と野菜のシャキシャキ感、そして大葉の爽やかな香りが楽しめます。魚を知り尽くした鮮魚店ならではの人気商品です。
父の武さんは「東京で魚屋以外のことをやってましたんで、まあそれが生きてる。2人で仕事できるのはやっぱりありがたいですよ」と、息子の新たな挑戦を頼もしく見守っています。
鮮魚店が営む隠れ家居酒屋「まる仙」
さらに、塩原屋魚店の奥には、午後5時からオープンする隠れ家的なお店があります。3代目の浩二さんが営む居酒屋「まる仙」です。
「魚屋もやりたいし、居酒屋もやりたい。両方あったらいいんじゃないか」という思いから、鮮魚店を継ぐことと料理人として店を持つこと、二つの夢を一つの形で実現させました。
自慢は、鮮魚店だからこそ提供できる、その日仕入れたばかりの新鮮な魚を使った料理。この日のおすすめは、常磐もののヒラメを使った「鮮魚わさびのり和え」。上品な味わいのヒラメに、わさびとのりの風味が香る一品です。また、料理に合う日本酒も県内をはじめ全国から取り揃えています。
父から受け継いだ店に、自分らしい彩りを加えてきた浩二さん。その胸には、かつて自分がそうだったように、という願いがあります。
「子どもの頃、親父の隣で魚切ってるの見てるのが好きだったので。まあ息子もそのうちなんかそんなふうになったらいいなぐらいには思ってますけども」
かつて父の背中を見て育った浩二さんは、今、父と肩を並べて店を支えています。親から子へ、そしてまた次の世代へ。塩原屋魚店の歴史は、これからも大切に受け継がれていきます。
『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2026年6月4日放送回より)










