「40か所も刺せば犯人の手には傷があったはず」

その一つが凶器とされてきた「くり小刀」です。これまでは、木工細工用の小刀で一家4人を殺害したとされてきました。
弁護側は、
▼くり小刀の形状から遺体を合わせて40か所も刺せば、刃と柄の間につばがないものであれば、血で滑って犯人の手には傷があったはずだ。
▼くり小刀は、職人用の工具であり、現場からは他にも小刀が見つかっていることから、もともと自宅にあったものではないか。
このようなことに加え「被害者の自宅で日常的に使われていた包丁が発見されておらず、真犯人がこの包丁を使って4人を殺害し、持ち去ったと考えるのが自然」と主張しました。
また、殺害された4人の傷の深さなどについても主張しました。
▼40か所の傷には、複数の深さがあり、そのうち1人の左胸を刺された傷は「くり小刀」では、長さが足りない
▼別の1人はろっ骨が折れているほどの傷があるものの、傷の長さや刺した時の圧力が「くり小刀」では足りない。

さらに、袴田さんが犯行時に羽織い、現場に脱ぎ捨てたとされてきた従業員用の雨合羽。検察は、このポケットに「くり小刀の鞘」が入っていた事で「犯人はみそ工場の関係者、そして、その中で、犯行に及ぶことができたのは袴田さん」と主張していますが、弁護側は10日の裁判で「ポケットに鞘を入れたのは警察。警察による証拠の捏造」とまで言及しました。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「弁護人としては雨合羽にしろ、金袋にしろ、はっきりと(捜査機関の)ねつ造と考えている」
弁護側は、10日の審理の中で「ねつ造」もしくは、ねつ造とまで言えなくても“袴田さんを有罪にするために捜査側が利用した証拠”少なくとも3点以上を指摘しました。

<袴田巖さんの姉・ひで子さん>
「私、ビックリしちゃった。捜査資料なんてたくさんあるでしょ?(弁護団は)それから探し出して、それを読み込んでくれたことに感謝感激。それにとても面白かった。きょうは居眠りはしませんでした」
やり直し裁判では、弁護側が警察、検察の捜査を攻め立て、57年前の裁判とは攻守が逆転したともいえる状況です。

10日の裁判で一番、法廷が息を呑んだ場面は、57年前の事件現場にあった証拠品が実際に並んだ瞬間です。「くり小刀」や「雨合羽」「ポケットに入っていた鞘」などが57年の時を経て静岡地裁の法廷に示されました。
弁護側は審理の中で、これらの3点などの証拠について「ねつ造」もしくはねつ造とまで言えなくても、“袴田さんを有罪にするために捜査側が利用した証拠”と指摘しました。
さらに、今回、新たに注目を浴びた証拠が「袴田さんが当時、履いていたとされるゴム草履」です。