原因不明の難病「ALS」(筋萎縮性側索硬化症)。全国に1万人、静岡県内にもおよそ260人の患者がいますが、根本的な治療法は見つかっていません。この病気と闘いながら、静岡県富士宮市の女性が作り上げたグループホームが1周年を迎えました。重い病気や障害のある人のために奮闘する彼女の原動力とは?

<看護師>
「大丈夫?ごめんね」

医療的ケアに特化した24時間体制のグループホーム「ケアサポート志保」。静岡県富士宮市に2021年5月にオープンした、利用者や家族が安心して暮らせる居場所です。

立ち上げたのは、清しお子さん。7年前、呼吸や手足に必要な筋肉が徐々に痩せ、力がなくなっていく難病、ALSと診断されました。発症すると、気管切開をして、人工呼吸器をつけなければ、2年から5年で死亡するといわれています。

<清しお子さん>
「諦めて死んじゃったらもったいない。いつかこの病気は治る病気になると信じている」

病気になったことで、生きることを諦めてしまう人を減らしたいという思いから、施設を立ち上げました。

<清しお子さん>
「支えてくれる人がいれば、生きる選択をする人も増えてくると私は考えます」

浜松市で行われた看護師が集まる研修会です。

<看護師>
「喉で痰がごろごろしているので、痰を取りたいと思うんですがよろしいでしょうか」

清さんは入居者の思いをくみ取れるスタッフを育てようと、多くの研修の機会を設けました。

<看護師>
「じゃあ繋ぎます、失礼します」
「普段何気なくやっていることをちゃんと基本に沿って一から勉強させていただくという機会を与えてもらって大変感謝しています」

<清しお子さん>
「ともくん、しおばあだよ。よく来たね」

富士宮市に住む、高山朋也さん。脳性まひ。体が反り返りやすく、手足がこわばって硬くなることが多くあり、自宅で介護をする母親が用事でみられないときは、こうした施設が頼りです。

<看護師>
「ともくん、おなかいっぱいになった?」

離れているときも朋也さんの笑顔を見せてあげたい…清さんは、母親に動画を送ります。

<朋也さんの母親>
「どうですか、どうですかっていう連絡をしたくても、やっぱりするのってどうかな。信頼して預けてるはずなのに…ちょっと遠慮があるので、そこはすごくありがたかったなと思いましたね」

秋田県由利本荘市、清さんのふるさとです。

<同級生>
「元気そうだ、いい顔してるね」

毎日のように、連絡を取り合っている同級生と3年ぶりの再会です。

<清しお子さん>
「胃ろうもしているけど、口からも食べられる。だから元気。酒も飲めるぞ」

<同級生>
「口は達者だな相変わらず」
「元気でいつものしお子と同じだ。こんな感じでずっといてくれればありがたいな」
「ありがとう、元気もらってるよ」

<清しお子さん>
「ほんとにうれしい。みんなこうやって集まってきてくれる。友達にとても恵まれている。感謝ですよね」

秋田で過ごした日々が、明るく気丈な清さんをさらに強くさせました。

<清さんの姉・ふみ子さん>
「ほんとに大変だろうな、苦しいだろうな…かわいそうだなと思ったけれどもね、こんなに強くいられる人っていないよ、ほんとに。私はそれで救われてるかもしれない」

<清しお子さん>
「なるようにしかならないと、すべてを受け止めてるから、そんなに大変に思うことはない。何が何だって、病気になんか負けてたまるもんですか!絶対病気には負けない」

5月10日。グループホームは、1周年を迎えました。スタッフを集めて、清さんは焼きそばを振舞います。

<清しお子さん>
「この先、まだまだ頑張っていきたいので、皆さん一人ひとりの協力と力を貸してもらえるようによろしく、私を支えてください」

<スタッフ>
「会長がいつも笑顔でいてくれるようなあったかい施設になってくれればいいなと思います」
「(清さんは)楽しい雰囲気をつくってくれるので、これからも変わらずに元気でいてくれればうれしいです」

「会長、誕生日おめでとうございます!」
「ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデートゥーユー」

スタッフからサプライズ!この日は、清さんの68歳の誕生日でした。

<スタッフ>
「おめでとうございます」

<清しお子さん>
「ありがとうございます」

患者の「居場所」をこれからも守り続けます。

<清しお子さん>
「利用者も少しずつ増えつつあるので、ここの運営は続きそうです。頑張らねば!あと10年は少なくても生きます。私はしぶといですから、大丈夫でしょ」