土石流災害から立ち直る熱海を見つめ続ける「熱海、再生へ」です。熱海市伊豆山で介護タクシーを営み、2021年7月の災害では、住民を避難させた夫妻。階段や坂が多い地区で外出が難しい人の願いを叶えるため、タクシーを走らせました。

 熱海市伊豆山で介護タクシーを運営する河瀬豊さん、愛美さん夫妻です。2021年7月の土石流では、大切な仕事道具の車両が被害を受けましたが、地域に暮らす12人を避難させました。
<河瀬愛美さん>「こんにちは。伊豆おはなです」
 2人は普段、体の不自由なお年寄りの通院などをサポートしていますが、この日は頼まれたのは外食の送り迎え。こういった仕事も請け負います。
<河瀬愛美さん>「じゃあ、行きますか。行きましょうか。お出かけしましょう」
 伊豆山地区で暮らす石川光衞さん90歳。持病があり、車いすの生活を続けています。伊豆山地区は人口のおよそ6割が65歳以上の高齢者。階段や坂も多く、みな、移動に苦労しています。石川さんの家も外階段が長く、出かけるには河瀬さんの協力が不可欠です。
<石川光衞さん>「大変だ。本当に。助かるね」
<妻の石川はるゑさん>「うちにいて寝てばっかりいると、やっぱりこういうの嬉しいですよね」
 豊さんが食事や観光の手伝いを積極的に受けるのには、こんな理由がありました。
<河瀬豊さん>「全身70%のヤケドで1年間入院した経験があり、外出できない人の気持ちがわかるので、家族で観光に行きたいという依頼は特にお受けしたい」
 石川さんのように外出が難しい人の希望を叶えたいという思いが強くあります。
 訪れたのは、市内のフレンチレストラン。車いすでも楽しめるようにと、河瀬さんが店も選びしました。家族団らんでの外食は久しぶり。
<石川光衞さん>「家族でね、いいことというか。なかなかこういう機会はないですよ」
 およそ2時間、石川さんも楽しいひと時を過ごしてくれたようです。
<娘の石川ひとみさん>「父の喜んだ顔が久々に見えたので、よかったと思っています。手伝っていただかないとどこも行けない。病院にも行けない状態なので、助かっています」
<河瀬豊さん>「去年の災害の時に、この辺の方も外出が難しくなってしまって、今回こういった形でお手伝いができて僕たちも嬉しかったし、何よりご家族が嬉しそうな顔をされていたのが印象的だった」
<河瀬愛美さん>「(外食などは)通院の時とは違う楽しさや喜びがあって、そういう場面に立ち会えるのが、すごく嬉しいなと思う」
 土石流からもうすぐ11カ月。伊豆山地区ではいまも通行止めという道があり、暮らしにくいという高齢者が多くいます。ひとりでも多くの人が伊豆山の地で変わらず暮らせるように。河瀬さんたちはきょうも一人一人に寄り添い続けます。