全国でもJRや首都圏の私鉄各社で運賃の値上げが相次ぐ中、静岡県西部でバスを運行している遠州鉄道も値上げに踏み切ろうと動き出しています。なぜ値上げが行われるのか。背景にはバス業界を取り巻く厳しい経営状況がありました。
地域の「足」として欠かせないバス。このバスの運賃の値上げをめぐり議論が交わされました。
5月25日、浜松市で開かれた公聴会。2022年11月、遠州鉄道が路線バスの運賃値上げを国に申請したことを受け、市民の要望により開かれました。公聴会には国土交通省の運輸審議会の委員と遠州鉄道の関係者のほか、公募で選ばれた市民2人が参加しました。

遠州鉄道では路線バスの運賃の値上げ額について、初乗りが120円から150円へ、130円以上の区間は20円から最大で50円値上げする方針を示しています。公聴会では値上げせざるを得ない理由について、遠州鉄道はコロナ禍が追い打ちをかけたと切実な状況を話しました。
<遠州鉄道 丸山晃司社長>
「乗合バスの収支が行政からの補助を含めて令和元年度ですね、3億4200万円の赤字。コロナ禍の令和3年度においては行政の補助をいただいても5億8200万円の赤字」

人口減少や新型コロナの感染拡大により、2009年度約27万5000人だった乗客数は年々減少。2020年度はその半分以下にまで激減し、下げ止まっている状況です。こうした中、市民から運賃の値上げについて賛否の声が上がりました。
<反対の市民>
「利用者が比較的多い近距離運賃の値上げ率が大きく、利用者が少ない遠距離ほど値上げ率が低い」
<賛成の市民>
「現在、運賃の支払いは現金と専用のカードしか使えず不便なため、サービス向上を図るためにも設備投資が不可欠だ」

<遠州鉄道 丸山晃司社長>
「本当にご利用のみなさまにはご負担をおかけすることになって誠に申し訳ないんですが、いわゆる公共交通を維持するという部分でご理解を賜りたいと思っております」
今後、運輸審議会は、遠州鉄道の訴えと市民の意見をすり合わせ値上げが妥当かどうか審議し、数か月以内に国土交通大臣へ答申する予定です。