静岡のいまを深掘りするインサイト。今回は土石流災害から立ち直る熱海を見つめ続ける「熱海、再生へ」です。被害にあった伊豆山地区に、地元のボランティア団体が資金を集め、カフェをオープンさせます。人がつながる拠点作りを目指しています。
この日は、カフェ「あいぞめ珈琲」の内覧会。地元の人にお披露目しました。
<訪れた人>「楽しみが一つ増えたみたい。あんまり外出できないから、ここに来ればみんなに会えるし」
カフェは土石流の被害にあった、逢初橋に近いこのビルの2階です。2021年7月3日、ここは国道が土砂に埋まり、住宅にも被害が出た場所です。橋の近くで弁当店を営む高橋一美さんは、発災直後からお年寄りに弁当を配る傍ら、困りごとの相談を受けるようになりました。不自由な生活をしている人たちの手助けができれば、そんな思いからボランティア団体「テンカラセン」の活動が始まりました。
<テンカラセン 高橋一美さん>「こんな状況なんですけど、ここに人と人がつながる場所が作れたらいいなと」
活動を続けてきて高橋さんが感じたのは、途切れてしまった地元のつながり。人がつながる拠点にしたいと、カフェの建設に乗り出しました。クラウドファンディングで資金を募ると、1カ月足らずで目標金額を超えました。
<高橋一美さん>「480万以上集まったので、生きるお金として活用できるような憩いの場だったりつながる場所にしたいと思っています」
この日は地元の子どもたちが内装工事の手伝いです。店内に飾るコースターには復興の願いを込めました。
<手伝いをした子ども>「伊豆山復興頑張れ。いつまでも元気な伊豆山。伊豆山が早く元の街に戻るように頑張ってほしいと思いました」
<高橋一美さん>「子どもたちに少しでも携わってもらいたい。これから伊豆山を作っていく子どもたちの方がいいのではないかと思って、そんな気持ちで、できれば子どもたちにやってもらいたいな」
災害から9カ月、高橋さんの目にはいまの伊豆山がどう映っているのでしょうか?
<高橋一美さん>「何も変わってないですよ。盛り土の問題だったり、開発の問題だったり、街づくりの問題だったりが、伊豆山の住民の方まで情報が来てないので。でも、何か皆さん、僕も含めて自分にできることをやろうとか前に進もうとか、人それぞれ前に進もうという気持ちはあると思いますけど」
内覧会には招待した地元の人たちでにぎわいました。
<内覧会に来た人>「(こういう場所が)なかなかなかったのですごいうれしいです。家族で来れるといいですね。また来たい人?」「コミュニケーションができるし、やっぱり人と人が合わなきゃ人間はだめですよ。一人でいたらね」
<高橋一美さん>「すごいね、ちょっとびっくり。知らぬ間に人が集まって、お客さん同士が会話してくれて、僕が入る隙間がないくらいがいいですね。少しでもみんなの力になれたらという思いでできた場所だと思うので、長く継続できればと思っています」
災害で途切れかけた人とのつながり。復興への一歩が始まりつつあります。