自ら命を絶った高校生 置き去りにされたトロンボーンを受け継いだのは

こちらは、吹奏楽などで使われる楽器の「トロンボーン」です(画像参照)。元々は神奈川県の女子高校生が使っていましたが、その彼女はもうこの世にいません。

彼女のトロンボーンは、今は岡山の高校で奏でられています。その音色には、亡くなった女子高校生と両親、そして楽器を受け継いだ岡山の高校生たちのたくさんの思いが詰まっていました。

今は明誠学院高校で使われているトロンボーン

岡山市内の演奏会場に鳴り響くトロンボーンの音色。力強さの中にも、どこか優しさが感じられます。かつては、横浜に住む女子高校生が吹いていました。

(母・小森美登里さん)「娘はいないんですけど、演奏を聴いているとそこにいるような感覚になれるんですね」

明誠学院吹奏楽部のOBには俳優・眞栄田郷敦さんも

吹奏楽の強豪、岡山市の明誠学院高校です。吹奏楽部では、1本のトロンボーンが代々部員たちに受け継がれています。そのトロンボーンが高校にやってきたのは、5年前のことでした。

ーこちらは?
(明誠学院高校吹奏楽部顧問 稲生健教諭)「小森香澄さんが生前使っていたトロンボーンです。『ともに奏でていこう』と思っています。僕らの大切な部員として」

トロンボーンの持ち主だった横浜の高校生・小森香澄さん。高校1年生の7月、自ら命を絶ちました。

何ものにも代えがたい我が子を失った悲しみ。母親の美登里さんは「二度と同じような思いをする人が出ないように」と、全国を回って講演を行っています。

(母・小森美登里さん)「小森香澄、15歳。いじめが原因で自殺をしました。『もうこれ以上頑張れないよ』という心の叫びを、私はあのときキャッチできていなかったなというふうに思います」

香澄さんは、両親に2つのものを遺していました。1つは、父親の友人から譲り受け、高校から始めたトロンボーン。そしてもう1つは、香澄さん自らが作った「詩」でした。その詩には、香澄さんの優しさが滲み出ていました。

(香澄さんの遺した詩「窓の外には」抜粋)「星の向こうには未来がある 未来の向こうには愛がある 愛の中には心がある」(全文は【写真】に掲載しています)

(母・小森美登里さん)「自殺をする4日前に、私にはっきりと『優しい心がいちばん大切だよ』と。『その心を持っていないあの子たちの方がかわいそう』と。『みんな出会った人と優しい心でつながってね』…そのことを香澄は願っていたんだと思います」