香川県高松市のピアニスト・高橋ゆり子さん(50)は乳がんと闘いながら、シャンソン歌手・蓮井Micaさん(51)とともに「シャンソン20区」というユニットで活動を続けています。

蓮井Micaさんと高橋ゆり子さん

いまは、積極的な治療をせず、自宅で療養している高橋さん。
ほぼ毎日、高橋さんのもとを訪れている蓮井さん。高橋さんは薬の影響もあり眠る時間が増えているといいますが、眠っているときにも指が動き「夢の中でピアノを弾いているようだ」といいます。

2人が出会ったのは、2019年。
共通の知人から、2人に共演を依頼されたことが始まりでした。

その後、高橋さんが演奏する「愛の讃歌」を聴いて、心を揺さぶられた蓮井さんが「一緒にシャンソンを」と声をかけました。

蓮井さんは、そのときの高橋さんの演奏が心に残っています。
「シャンソンは、人生のフィルターを通して表現するもの。まだ病にかかる前だったが、高橋さんの演奏には、人間性がにじみ出ていた。技巧に走らず、高橋さんが生きてきた道が想像できるような演奏だった」と振り返ります。

高橋さんは蓮井さんのオファーを受け入れ、2人は、2020年3月から「シャンソン20区」として活動を始めました。
コロナ禍で、さまざまな制限がありましたが、2人で工夫してステージを重ねていました。

そんな中、高橋さんは胸のしこりに気が付きました。2021年秋。
蓮井さんは、一緒に昼食をとったとき、高橋さんから胸にしこりがあり、細胞検査したことを打ち明けられたといいます。

その後、乳がんと診断されました。
高橋さんは落ち込みましたが「負けてたまるか。後ろばかり向くのは嫌い」という思いで、前を向きます。
蓮井さんにも「力を貸してほしい」と病の経過を伝えました。

2022年3月、胸のしこりが大きくなり、抗がん剤でがんを小さくして切除することを提案された高橋さんは、手術をうけることでピアノが弾けなくなることを一番恐れました。