◆硬軟織り交ぜた中国のあからさまな選挙介入
「何が起こるか、わからない」といえば、やはり中国の動きも気になる。
中国の習近平主席は12月31日、新年を迎えるにあたったメッセージを発した。その中で「祖国統一は歴史の必然だ」と強調した。「中華民族の偉大な復興」、これは習主席のスローガンであり、最大の柱が台湾の統一だ。
ただ、習近平氏がトップになって以降の台湾総統選は2016年、2020年と、いずれも習近平氏が望む国民党の候補は敗れ、中国が望まない民進党の蔡英文氏が当選している。習近平氏はこれまでのところ、台湾政策について結果を残せていない。
しかも、1996年に初めて有権者による直接投票が始まって以来、同じ政党が勝ったのは2回まで。今の蔡英文総統に続き、また民進党の頼清徳氏が勝てば、民進党が3連勝となる。習近平政権はメンツを失うことにもなりかねない。
「投票箱が閉まるまで、何が起こるかわからない」というのは、中国の出方ということになりそうだ。繰り返すが、前提として中国は、国民党の政権奪還を望んでいる。そのために、硬軟織り交ぜた作戦を取る。
まず硬軟の「軟」。中国政府は12月下旬になって台湾の高級魚ハタの輸入を再開した。2022年6月から輸入を止めてきた政策を改めたのだ。中国へ輸出できず困ったのは、台湾南部の漁業者だが、彼らは民進党支持者が多い。つまり「民進党のままなら、生活に困りますよ」という警告だった。
それを、総統選挙の直前になって輸入を再開した。漁業者はさっそく中国へハタを送り出し、商売が戻った。中国側は輸入再開の理由について、わざわざ「国民党からの要望を踏まえて解禁した」と説明している。
一方で、「硬軟織り交ぜ」の「硬」。まずは気球。台湾国防部(国防省)によると、元日から6日までに中国の気球が合わせて12機が飛来した。中国の気球が台湾上空を横断するのは異例だ。高度は4000メートルから7000メートル。香港での報道によると、気球は衛星測位システムの装置を搭載している。中国国内へデータを送れるのだろうが、それよりも、台湾住民への心理的影響を狙ったものだろう。
もう一つは、関税だ。台湾で製造され、中国へ入る一部の輸入品には関税の優遇措置があるが、12品目については1月1日から優遇措置を停止し、さらに対象品目を増やす方針だ。中台の政治問題と経済連携を結びつけ、圧力をかけている。人工知能(AI)を使った偽の動画が拡散するなど、候補者に関する偽情報が飛び交う。台湾側は中国が操っているとみて、警戒を強めている。
これらはあからさまな選挙介入と言っていいだろう。アメリカのバイデン大統領は11月、サンフランシスコで習近平氏と会談した。大統領は習主席に対し「台湾の総統選に介入しないように」と警告していた。他国への選挙介入。その手法は、連携し合う中国とロシアは似ている。
そのアメリカが望むのはもちろん、中国との融和路線をとる国民党ではない。今の与党・民進党が政権を維持するのが望ましい。日本も、政府は公には表明できないが、本音は同じだ。民進党が蔡英文総統の「現状維持」路線を継承するなら、それが最も望ましい。







