◆ユニホームのデザイン文字を手がかりに病院に電話


(6)ユニホームの胸のところに、漢字らしいデザインされた二文字がありました。でも、よくわからない。「多分、こんな漢字だろう」と、その県で検索しても出てきません。胸の真ん中にもかわいらしい小さな模様があり「々」という字が読み取れました。

(7)スマホで検索すると、病院名が3つ出てきました。ひとつ目の病院に電話して「野球部はないですか」と尋ねると、受話器の向こうからはけげんな声で「ありませんが…」。残りの2つにも電話して最後の病院も「ない」という回答でしたが「一応連絡先を教えて」と言われたので、伝えておきました。

(8)愛知県警中村警察署から「駅の交番に届け出がありました」と電話が入りました。どうやら僕の荷物は届けられているようです。だけど、このバッグを届けなければ! もしこの後すぐに野球の試合があったら…。

(9)知らない番号から電話がかかってきました。「野球部の△△と申します。うちの選手の荷物をお持ちだとか」「えええ? そうです、そうです!」病院から連絡があって電話をした、と言うのです。私が問い合わせした病院自体に野球部はないけれど、スポンサーになっていました。病院の事務員さんが調べて連絡を取ってくれたそうです。話を聞くと、神奈川県であす試合があって、きょうは開会式。用事で遅れて一人で向かっている選手がいるが、その本人とは連絡が取れないとのこと。

◆「おろしたてて気づかなかった」慣れないものは要注意

(10)名古屋に行って自分の荷物を受け取り、2つのキャリーバッグを持って神奈川に行くことにしました。すると、新大阪に向かう電車の中で、持ち主本人から電話が。「いま、名古屋にいます。交番で待ち合せましょう。私も、すっかり自分のものだと思って(バッグを)引っ張っていました。飲み物を入れようと思って開いたら、中身が違うことに気づいたんです」という内容でした。

(11)交番で会って、無事にバッグを交換できました。ご迷惑をかけてしまったのだけど、持ち主の方も「きょう、おろしたばかりのバッグで、自分もまったく気づかなかった」と。いい人で、思わず交番の前で、バッグを並べて記念写真を撮りました(笑)


JR東海の忘れ物担当の方、愛知県警中村警察署、病院の事務の方、そして大学のマネジャー。みなさんお世話になりました。持ち慣れないものを持った時は要注意です。


神戸金史(かんべかねぶみ) 1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKB毎日放送に転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材して、ラジオ『SCRATCH 差別と平成』(放送文化基金賞最優秀賞)やテレビ『イントレランスの時代』(JNNネットワーク大賞)などのドキュメンタリーを制作した。