欠席の理由はブラジル訪問時期か、それとも…
中国外務省は7月2日、李強首相がBRICS首脳会議に出席すると発表しました。当然、習近平主席が出席するものと見られていたため、「首相が行く」という発表で習近平主席の欠席が明らかになりました。外務省のスポークスマンはBRICSを「グローバルサウスの発展と協力を促進する重要なプラットフォーム」と高く評価し、アメリカの一国主義を暗に批判しましたが、習近平主席が参加しない理由については説明しませんでした。
石破総理が6月下旬に予定していたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議への出席を直前で取りやめたのは記憶に新しいですが、習近平氏は2013年に国家主席に就任して以降、BRICS首脳会議には毎回必ず出席し、開催国を公式訪問したり、周辺国を歴訪したりするなど、トップ外交を展開してきました。それだけに、「なぜ今年は行かないのか?」と不思議に思う声が出るのは当然です。
ここからは推測の域ですが、まず考えられるのは、開催国ブラジルでは昨年11月にG20サミットが開かれ、習近平主席はこの時にすでにブラジルを訪れているという点です。わずか8か月しか経過していません。また、BRICSメンバーであるロシアのプーチン大統領が現地ブラジルには「行かない」とすでに表明していたことも、習主席の判断に影響した可能性もあります。
健康不安説と国内問題への専念
まさか健康不安があるのか、という声も一部の中国ウォッチャーや元外交官の間で聞かれます。しかし、習主席は6月中旬には中央アジア諸国首脳会議出席のためカザフスタンを訪問し、さらに6月下旬には北京を訪れた各国首脳と次々と会談し、その映像も国営メディアで流れています。これらの活動を見る限り、健康問題ではないとすれば、「ブラジルに行かない」という判断は「国内問題に専念したい」という意図があるのではないでしょうか。
国内問題として考えられる要素は主に二つあります。
一つ目は、中国では毎年夏は政治的に重要な意味を持つ季節だということです。共産党の現役最高幹部や長老が避暑地に集まり、重要な会議が開かれます。その事前準備も非常に大切です。一方、BRICS首脳会議の開催時期は年によって異なりますが、今年は偶発的にこの避暑地での重要会議と、遠いブラジルでの首脳会議が重なりました。(以前このコーナーでも報告しましたが)習近平氏がトップを務める中央軍事委員会の混乱が続いており、6月末には軍事委員会メンバーの2人目が新たに解任されました。そのような中で夏の重要会議が控えているのです。
もう一つの要素は、今年の夏、2025年が中国にとってもわれわれ日本にとっても「特別に重要な夏」であるからです。







