軍艦島の価値とは?

出水さんに、軍艦島のすごさを尋ねた。
「観光的な立ち位置で文化財として注目されるけど、我々研究者にとっては、建物がどう壊れていくかを見られる場所。老朽化していく建物が壊れていく様子を見られる場所は他にない。どう壊れていくかを見ることによって、私たちの生活を支えるインフラがどう今後崩れていくのか、どう守っていくことができるのか、それを見つけられる貴重な場所。そういう意味で、研究的な価値がある。大正から昭和まで、4,5年おきぐらいに建物が建てられているので、いろんな材料が使われている。様々な時代背景の中で、あの建物がどう作られ、どう壊れていくかを見られる場所というところで価値があると思っている。」
老朽化が進む軍艦島で守るべきものとは?


老朽化していく建物が崩れているのを見るだけで、保存はできないのだろうかと、素人の筆者は素朴な質問をぶつけてみた。すると、守るべきは建物ではなく護岸だという。
「世界遺産と言われているのは建物ではない。崩れても仕方がないという立ち位置で見ている。守らなければいけないのは、島を囲っている護岸。この護岸がなくなると、島自体がなくなってしまう恐れがある。護岸は、一見頑丈そうに見えるが、海に潜ると、身長185cmの僕がすっぽり入るような穴がいくつも開いている。少しずつ穴を埋めたり、周りを補強したりしている。」
海に囲まれるがゆえに厳しい条件
「建物も残してほしい気持ちもあるが、状況はひどく、手が付けられないらしい。海に囲まれているので、鉄筋コンクリートの中の鉄がさびてボロボロになっている。軍艦島にはコンクリートの建物が乱立しているが、中にはすぐにでも崩壊しそうなものもある。」
日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパート「30号棟」もその一つだ。出水さんいわく、「フラフラの状態」なんだとか。