管理栄養士としての経験

とはいえ、すべての高齢者に画一化した支援サービスをあてはめてもうまくいかない、と感じている。山内さんは大学卒業後、管理栄養士として熊本県内の病院に勤務。食べる力が弱くなった高齢者が口から食べられるようにするためのプロジェクトに携わった。この時の経験からだ。
セーフライド代表 山内紗衣さん(35)
「患者さんはかむ力がとても弱いので、提供するのはどろどろの食事なんです。でもどろどろだと食欲がわかない。『やわらかくても食欲わくような食事をつくってくれ』とドクターから言われて、見た目を工夫したり香りとか、形をなるべく残す、けれども舌でつぶせるくらいのやわらかさにする。圧力鍋や重曹を使ってつくりました。それでも、何が食べられるのか、人によって違うんですよ。カップラーメンばかり食べていたおばあちゃんは、病院の食事をいっさい受け付けないんですけど、カップラーメンは食べるんですよ、びっくりするぐらい。食事がとれなかったのに、先生の許可をもらってだしたら。でも毎回カップラーメンだすわけにもいかず・・・。結局、それまでどう生きてきたか。生活って十人十色あって、免許返納後の生活の課題もそれまでの生き方によっても変わってくるので、マニュアルはあっても、その人に合わせて変えていかないとうまくいかないよね、って考えています」
免許返納は減少傾向

警察庁によると、2023年末現在、運転免許証を持っている65歳以上の高齢者は1983万人あまり。全体の24%で、ドライバーの4人に1人が高齢者だ。免許を返納した65歳以上の人は、池袋での事故が起きた2019年に前年比1・4倍の60万人あまりと大きく増えた。しかしその後は徐々に減少し、2023年は約38万2900人だった。
免許返納を促すことについては、「運転する権利を奪う」との考え方もある。年齢でくぎるのではなく、運転の適性を正しく判断するしくみをつくったり、技術開発を進めることで高齢者の事故を減らしたりするというアプローチだ。
山内さんはなぜ、起業し免許返納を後押ししようと考えたのか。
セーフライド代表 山内紗衣さん(35)
「池袋で起きた悲惨な事故のニュースをみて、なんとかできないかなとずっと思っていたんですが、子供が生まれてからより切実に思うようになりました。自分の子供がそういうふうになったら・・・と。子供が生まれて我がごとだと思うようになりました。そんな時にベビーカーで散歩していたら、高齢ドライバー運転の車にひやっとすることがあって、これってもう他人事じゃないなって」
山内さんは、子供が1歳2か月になり保育園に入ることが決まったタイミングで起業した。
起業から4か月。まだ利益を出すまでにはいたっていない。







