台湾の半導体製造大手・TSMCの熊本進出により、半導体産業とは無縁と思われる業界に、商機が訪れている。

九州の旧産炭地でしっくいを製造する創業100年のメーカーは、新たな参入で年間100億円の売り上げを目指す。

半導体バブルの現場を取材した。

まるで「アナと雪の女王」の世界 真っ白なしっくい工場

今年で創業100年を迎える福岡県田川市のしっくいメーカー・田川産業。工場内に足を踏み入れると、雪で覆われたような銀世界が広がる。まるでディズニー映画「アナと雪の女王」の世界だ。

一面を覆っているのは白い石灰。田川産業は、伝統的な建材の「しっくい」で国内トップシェアを誇り、生産するしっくいは商業施設や住宅のほか、城など文化財の修復などにも使われている。

そして去年、この工場では、半導体関連の部品の製造が、新たに加わった。

しっくいメーカーがつくる国内唯一の高圧プレス機

田川産業・営業部足立太郎さん「こちらで半導体製造装置に使われる部品を成形しています」

田川産業が製造しているのは、最大4000トンの圧力をかけることができるプレス機。国内には他にないという。

しっくいメーカーがなぜ半導体関連のプレス機、なのか。

話は20年ほど前に開発した独自の技術に遡る。