旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反として福岡県内の80代の夫婦が国に損害賠償を求めていた裁判で、福岡地裁は30日、手術を「違憲」と判断した上で「除斥期間」の適用を認めず、国に約1600万円の賠償を命じました。

◆原告は聴覚障害がある夫婦

この裁判は、ともに聴覚障害がある福岡県に住む80代の夫婦が、障害者に不妊手術を強制した旧優生保護法のもと、約50年前に夫が不妊手術を受けさせられたのは憲法違反だとして国に1人あたり2200万円の損害賠償を求めていたものです。夫は、提訴後2021年に亡くなり訴訟の一部を親族が引き継ぎました。

◆除斥期間の適用「著しく正義・公平の理念に反する」

30日の判決で福岡地裁は、手術を違憲とした上で、損害賠償についても、不法行為から20年を過ぎると損害賠償を求めることができなくなる「除斥期間」の規定を適用せず、国の責任を認めて約1600万円の賠償を命じました。

判決で上田洋幸裁判長は、「訴訟の提起に至るまでに時間を要したのは、長年優生手術を受けさせられたことに深い羞恥心や自責の念を抱える中で、優生手術を受けたことを公表した上、被告に対して責任追及するということに恐れや不安を感じていたことや、手話を日常使用するため原告と代理人らの意思疎通が通常よりも困難であったこと、夫が半身不随状態にあって自ら手話によって被害を伝えることが困難な状況にあったこと、2019年2月に夫が体調を悪化させ、その後入院していたこと等の理由があったと認められる。除斥期間の規定を適用し、当該権利を消滅させることには著しく正義・公平の理念に反するべきと言える」と指摘しています。