大分県にある特別支援学校で、女子生徒が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐり、大分地裁が県に対し、遺族に660万円の支払いを命じた判決を受け、県教育委員会は5日、控訴を断念する方針を固めました。
この裁判は2016年、別府市の県立南石垣支援学校で高等部3年の林郁香さん(当時17)が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐるものです。
遺族は郁香さんに重度の知的障害があったにもかかわらず、食事中の見守りを怠ったことや、適切な救命措置が取られなかったとして、県におよそ3700万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
3月1日に開かれた判決で大分地裁は「郁香さんのそばを業務上離れる理由があったとしても周囲に声かけするのは容易かつ可能だったのにそれをせず、食事中の郁香さんを一人残したのは見守り義務に反する」として、県におよそ660万円の損害賠償を命じました。
判決を受けて5日、県教育委員会が開かれ、今後の対応を協議した結果、県側は控訴せず、判決を受け入れる方針を決定しました。
一方、母親の香織さんは「今後については、弁護士と相談することにしています。5日の県の方針については、現時点で正式に連絡を受けていないので、コメントすることはありません」と話しています。
(県教育長職務代理者・岩崎哲朗委員)
「判決の中では大分県の責任が問われており、亡くなられた林郁香さん、ご両親及びご家族の皆様に対し、教育委員会を代表してお詫び申し上げます。改めて、亡くなられた林郁香さんのご冥福をお祈り申し上げます。給食中に起きた事故で生徒が亡くなっていること、事故から7年以上が経過していること等を考慮し、控訴せず、判決を受け入れることとしました。今回の事故を受けて、教育委員会では、児童生徒一人一人の障がいの状態に応じて安全に食事が行われるよう、「摂食指導の手引き」を作成するとともに、教職員を対象に研修会を繰り返し開催するなど、事故防止と安全確保に努めているところです。今後も、引き続き十分な研修を行うなど、二度と同じような事故が起こることのないよう、児童生徒の安全確保について、万全を期してまいります」