かつて北国街道の宿場町だった石川県野々市市の本町地区。人口の増加が続く野々市で歴史的価値のある町家の保全が課題になる中、一軒の町家が世代を超えて町に活気をもたらします。


○開店祝いの花が集まる
「おめでとうございます」
「ありがとうございます。ご丁寧にすみません」

5月11日に野々市市本町でプレオープンを迎えた居酒屋「よっさん。」。


明治時代に建てられた古民家を活用し、内装には柱や梁などをそのまま生かした店舗です。

店主の吉田克人さんは直感でこの町家での出店を決めたと話します。


よっさん。店主・吉田克人さん「扉を開けた瞬間良いと思った。ビビっと来るものがあった。すごくいいんですよこの大きい柱もそうだし、取れない柱もあったが逆にそれも風情があっていい」


町家を所有するのは、この家で生まれ育った舘明宏さんです。


舘明宏さん「こうして人が集まる場所になっていけばいいなと思う」

舘さんは空き家になっていた築140年の町家を改装し、「舘家 古今調和(たちけ・ここんちょうわ)」という名前で3軒のテナントが入る施設として整備しました。


施設の一部では、現在も工事が進められています。

舘明宏さん「こちらに土蔵がありまして、蔵になって土壁の土蔵で防火の役目もあって火事になってもここは焼け残る」

「(もともとは何がおいてあったスペース?)家のものとか、ざっくばらんにおいてあって、味噌や醤油とかつけたり、昔はよくものがいっぱい、昔のものが多い」


また、町家からは旧野々市町の初代町長を務めていた曽祖父・舘惣次郎氏が遺した町の行政に関する文献など、19,000点以上が見つかりました。これらの資料は現在、調査を兼ねて野々市市に保管されています。

野々市町初代町長・舘惣次郎氏


続いて案内してくれたのは、"オエ"と呼ばれる大広間です。

“オエ”と呼ばれる大広間


舘明宏さん「"オエ"という場所、ここで地域の人が飲み食いしたり、いろいろと広まった形で。子供の頃は遊んだ記憶しかない」

囲炉裏があった場所には鍋などを吊るすための大きな自在鉤(じざいかぎ)が、今も残されています。


舘明宏さん「何かあるごとに親戚が集まって十何人とかで飲み食いしたりしていた」

こちらは舘家に残されていた8ミリフィルムの映像です。約半世紀前の生活が記録されていました。


地域のお祭りの様子も。


舘明宏さん「獅子舞とかうちらも関わって子供たちも棒振りとかもして、その中で地域との関わりを舘家はしていたと昔から祖父母にも言われる」


舘家のある野々市市本町地区は江戸時代、加賀藩の城下町・金沢から関西方面に向かう北国街道の最初の宿場町で、交通の要衝として栄えました。

国の重要文化財・喜多家住宅


国の重要文化財・喜多家住宅など旧北国街道沿いには歴史的な建築物が残ります。

野々市市地域振興課・木戸口浩士課長「昭和の時代は本町銀座って言われたこともあったりして、非常に賑わいがあった」

野々市市本町2丁目・1953年頃


野々市市の人口は現在約5万5000人。

人口減少が進む県内において、金沢市のベッドタウンとしてこの10年間、人口が増え続けています。


野々市市地域振興課・木戸口浩士課長「いろんなにぎわい創出でソフト事業・イベントをやっているが、どちらかというと単発で終わるものが多いが、経常的なにぎわいも図っていく必要がある」


人口の増加やにぎわい創出と同時に旧・北国街道が通る本町地区が直面する課題が歴史的な町並みの保存です。


野々市市地域振興課・木戸口浩士課長「非常に建物の老朽化が進んでいる。維持管理はたくさん費用がかかるということで、貴重な建物が取り壊されて駐車場になったり、現代的な住宅に変わってしまうケースもみられる」

野々市市地域振興課・木戸口浩士課長

野々市市では町並みを保全するために旧北国街道に面する1955年以前に建てられた建築物44軒を対象とした補助金制度を設けています。

この補助金が、舘さんが生まれ育った家をテナントとして整備するきっかけとなりました。


舘明宏さん「父親が亡くなって遺産相続でこの家を相続したが、住むには大きすぎるので、それなら活用してもらったほうがいいと思った」

舘さんは金沢市の住宅メーカーなどと協力し、コンセプトやレイアウトなどをすり合わせ、工事を進めてきました。


ヤマダタッケン・澤野恵社長「年数がたって雨漏りであったり木が少し朽ちてきたりしていた、ただ全部新しくしてしまうとこの風合いが出ないので、古いところを生かしながら今の新しく使う部分が安心安全なお店として成り立つかをスタッフみんなと考えながらやっている」


ヤマダタッケン・澤野恵社長 「この柱から向こうが廊下だった。ここもずっと全部廊下だった。構造的に必要な柱だけ残した」


澤野社長は実際に店を見て気づいたことを店主の吉田さんに伝えます。


澤「ここ暑いですね」吉「空調がそこに回らないんですよね。扇風機置かないと」澤「ここは一個あったほうがいいかもしれない」

「おいしいよポテサラ」


人々が集う場として新たな歴史を刻み始めた町家。


「昔の感じが残っているのがすごくいい」「外国の方もすごく喜ぶのではないか」

生まれ変わった舘家は昔の面影を残しつつ、街に活気をもたらします。


舘明宏さん「ボロボロな状態で屋根の修理から始まって、ここまでこぎつけたので、こうしてみんなが集まって楽しくなっていけばいいなと思う」