家畜の伝染病予防などを担い、鹿児島で盛んな畜産業を支える県の機関・家畜保健衛生所。県内に6つある施設のうち、姶良市加治木町の施設が老朽化に伴って霧島市牧園町に移転される計画です。ただ、予定地周辺には観光地もあり、地元では反発が強まっています。

(署名を集める住民)「姶良家畜保健衛生所の建設場所の変更を求める署名活動を行っています」

署名への協力を呼びかける霧島市牧園町の住民。問題にしているのは、地元で計画されている姶良家畜保健衛生所の移転です。

(署名を集める住民)
「知らない人がたくさんいる。住民が知らないうちに進んでいることが問題」
「去年の12月に初めて事情を知って。それは違うでしょうと。市民に対して説明責任を果たすべき。納得いかない」


(記者)「姶良市にある姶良家畜保健衛生所です。建設から50年以上がたち、コンクリートのはがれなども目立っています」

現在の姶良家畜保健衛生所は1967年に建設されました。建物が老朽化し、周辺の宅地化も進んだことから県が移転を決めたのです。

(県畜産課 大薗浩之・家畜防疫対策監)「老朽化が進んだうえ、周辺の宅地化が進み現地での建て替えが厳しい」


(記者)「姶良家畜保健衛生所の移転が計画されている土地。その奥にはホテルや旅館が立ち並ぶ霧島の温泉街が広がっている」

移転が計画されているのは、霧島市牧園町の高千穂地区にある、広さ1万1000平方メートルの土地です。県が管内の市や町に候補地を募集し、霧島市と姶良市が提案した4か所の中から予定地として選ばれました。
周辺にはみやまコンセールや霧島温泉郷、去年、全国和牛能力共進会が開かれた霧島高原国民休養地もあり、多くの観光客も訪れる地域です。

県は去年6月に自治会の役員に計画を説明して準備を進めていましたが、多くの住民が知ったのは去年12月で、「自然豊かな観光地になじまない」として計画撤回を求める声が急速に高まったのです。

予定地周辺の住宅には反対の意思を示すピンクのリボンも見られるなど、地元では反対の声が多く聞かれます。

(署名した住民)
「ここは温泉地でもあり観光地。霧島市でも有名な。施設(家畜保健衛生所)が悪いんじゃない。建設する場所が悪い」
「鹿児島の中でも文化ゾーンとして有名。そこに家畜保健衛生所をわざわざ建てなくても」

家畜保健衛生所では衛生指導や検査を行うだけでなく、死んだ原因が分からない家畜の解剖・焼却も年に20回から30回ほど行っています。県は、施設から煙や臭いが出ないよう対策は取るとしています。

(県畜産課 大薗浩之・家畜防疫対策監)「最新の無煙無臭の焼却炉を整備する予定。煙や臭いは心配いらないと考えている」

しかし、住民の要望を受けて先週、開かれた説明会では不安の声が相次ぎました。

(地元住民)「県外からも多くの人が来る。ここの場所に造ることを危惧している」
(旅館経営者)「私たち旅館業は口コミや風評にとても敏感。イメージも大きい」


県に計画撤回を求める署名は1000人分を目標にしていて、この1週間ほどで400人分が集まったといいます。

(地元自治会役員 槐島義則さん)「今まで検討した中でいい所はあるはず。その中からここ以外はどこだろうと、新たな候補地を決めてほしい」

県は来年度から工事に着手し、2024年度からの稼働を目指していますが、住民からの反発を受け、対応を検討しています。