5年に1度の「和牛のオリンピック」全国和牛能力共進会=全共が鹿児島で開かれて1か月。9つの審査区のうち6つでトップの1席を獲得し、種牛の部で内閣総理大臣賞に輝くなど「日本一」の好成績を収めた鹿児島の和牛のブランド力で販路拡大につなげようという取り組みが動き出しています。

さつま町の薩摩中央家畜市場で8日に行われた子牛のセリ。最高で1頭166万3200円と、先月のセリを54万円上回る高値がつきました。参加した薩摩川内市の肥育農家・森永三徳さんは、全共の肉牛の部・7区で5席に入りました。

(森永三徳さん)「いろいろな人に声をかけられてうれしい。飼料代が上がって大変。これからの努力次第で道は開ける」

52年ぶりの鹿児島開催となった全共では、9つの審査区のうち、鹿児島が6つ、宮崎が2つ、大分が1つの区でトップに輝きました。
鹿屋市では、地元の生産者が3つの審査区で1席を獲得。ふるさと納税の返礼品でもある牛肉のPRに勢いをつけたいとしています。

(鹿屋市ふるさとPR課 小野原幸子主任主事)
「鹿屋産の鹿児島黒牛の名前が売れるといい」

県も県庁の玄関に「和牛日本一」をアピールする巨大看板を設置。大会を振り返る動画も公開し、塩田知事がフランスで県産和牛をPRするなど、販路拡大に力を入れています。

(全国和牛能力共進会推進室 福重哲也室長)
「鹿児島黒牛のブランド力の一層の向上、肉用牛の稼ぐ力の向上につながる」

「和牛日本一」を追い風にしようとの動きは民間でも。

(カミチクホールディングス 上村昌志社長)
「和牛日本一の県・鹿児島からやって来たというインパクトはすごい」

海外への牛肉の輸出もしている鹿児島市のカミチクホールディングスです。今回の全共には出品しませんでしたが、「日本一」の好成績は県産牛肉の知名度アップにつながると期待しています。

(カミチクホールディングス 上村昌志社長)
「(Q.全然冠として違う?)やっぱり違う。世界に行くと神戸牛がナンバーワンだというイメージがある。そうかもしれないが、本来ならたくさん頭数を持っているし、生産基盤はすごいんだよということがうたえる」

牛肉の国内消費量は以前は右肩上がりに増えていましたが、BSEなどが確認された2001年度以降、落ち込み、ピーク時の水準まで回復しきれない状況が続いています。

その中で注目されているのが輸出です。県産牛肉の輸出額は和食ブームなどを背景に伸びていて、昨年度は初めて100億円を突破し、過去最高の114億円となりました。

(カミチク海外営業部 上村幸生ブロック長)
「海外はA5っていう響きが大好き。霜降りが入っている肉。ステーキで使われる肉。そういったところを中心に海外へ輸出されている」

牛肉を評価する「等級」は、牛からとれる枝肉の割合の大きさ=「歩留まり」がA、B、Cの3段階、肉や脂の色や光沢、サシの混じり具合などから評価する「肉質」が5〜1の5段階あり、どちらも最高の「A5」が最高ランクとされ、高値で取引されています。

左が2等級の肉。右が5等級の肉です。2等級が赤身が多いのに対し、5等級はサシが多く入った霜降り肉で甘みがあり、柔らかい食感が特徴で、海外での需要も高まっています。
鹿児島で取引された牛肉は4等級以上が9割を占め、3等級以下は1割以下に留まっています。ただ、国内では赤身を好む傾向が強くなっているといいます。

(カミチク海外営業部 上村幸生ブロック長)
「こちらは2等級の牛。スーパーで出回っている肉。非常にあっさりして食べられる。スーパーとしては好まれる肉」

こうした消費者のニーズに対応するためにも、今回の全共ではサシの量だけでなく脂肪の質も重視して評価する7区が、肉牛の部に新設されました。しかし、ライバル宮崎が7区で1席となり、肉牛の部の内閣総理大臣賞をとるなど、鹿児島は肉質という意味で課題を残しました。

生産現場では試行錯誤が始まっています。

(カミチクホールディングス 上村昌志社長)
「うまみが増すようなえさや粗飼料、品種、血統を改良しながらやってきた。ほかに先駆けて、いろいろな改善をしたい」

(全国和牛能力共進会推進室 福重哲也室長)
「これまで以上に牛肉のおいしさに特化した肉牛の部では審査される。チーム鹿児島で解決しながら、北海道につなげていきたい」

大会が終わって1か月。5年後の北海道大会でも「日本一」の成績を残すべく、取り組みが始まっています。