「重大事故が発生する危険性がある」として鹿児島県の住民などが国と九州電力に、川内原発の運転差し止めを求めていた裁判で鹿児島地裁は21日の判決で原告の訴えを退けました。九州電力の安全対策に「不合理な点は認められない」としています。
この裁判は鹿児島県や全国に住む3060人が、国と九州電力に対し「重大な事故が発生する危険性がある」として川内原発の運転差し止めを求めていたものです。裁判は福島第一原発事故の翌年の2012年に始まりました。
鹿児島地裁で開かれた21日の判決で窪田俊秀裁判長は「原告らが主張する地震や火山災害などによって重大事故が発生する具体的な危険性があることは認められない」などとして原告の訴えを退けました。
主な争点の1つだった地震のリスクについて原告は「九州電力が想定している最大の揺れ=基準地震動を上回る地震の可能性がある」と主張していましたが、地裁は「基準地震動は最新の知見を踏まえ不合理な点は認められない」と判断しました。
次に火山のリスクについてです。原告は「川内原発の半径160キロには姶良カルデラなど5つのカルデラがあり火砕流が届く場所にあり危険」などと主張していましたが、地裁判決は「『川内原発の運用期間中に破局的噴火が起こる可能性は十分に小さい』とする九電の評価に不合理な点はない」としました。
また原告の「避難計画に不備がある」などとする主張については「避難計画の実効性があるかないかに関わらず、原告が主張する重大事故が発生する具体的危険性はない」などとしています。
21日の鹿児島地裁の判決は原告の主張をすべて退けるものでした。福島第一原発事故を受けて作られた原発の新しい規制基準に「合格」した九州電力の安全対策に「不合理な点は認められない」としています。
(弁護団 森雅美共同代表)「最初に結論を決めている。原告の方が危険があると具体的に主張しない限り、安全という論理で全て押し切っている判決ではないかと思う」「断じてこういった判決は許容できない、不服ということで控訴せざるを得ない」
(九州電力・地域共生本部 金田薫司・原子力訴訟担当部長)「今回の判決はこれまでの主張が裁判所に認められたもので妥当な結果」「今後もさらなる安全性、信頼性向上への取り組み実質的・継続的に進め、原子力発電所の安全確保に万全を期す」
判決のあと、塩田知事が取材に応じました。
(塩田康一知事)「火山・地震といった具体的な危険性がないという趣旨と報告を受けている」「20年延長にあたっても色々な事項について要請している、引き続き専門委員会の意見を踏まえながら、安心・安全の確保に努めていきたい」
また薩摩川内市の田中良二市長は「司法判断に関してのコメントは差し控える。引き続き安全な運転管理の徹底をお願いしたい」としています。
原告団は今回の判決を不服として控訴する方針です。