京セラ名誉会長の稲盛和夫さんが8月24日京都市内の自宅で亡くなりました。90歳でした。稲盛和夫さんは1932年鹿児島市生まれで、鹿児島大学を卒業後、1959年27歳の時に京都セラミックを創業。1997年からは名誉会長を務めました。2019年には初の名誉県民に選ばれました。
2014年に自らが創設した京都賞の授賞式で鹿児島に帰られた時に、ふるさとへの思いや、日本のこれからを聞きました。
(2015年1月放送MBCニューズナウ「この人に聞く」を再構成)
鹿児島市出身、京セラ名誉会長の稲盛和夫さん。ファインセラミックスの研究開発で京セラを日本有数の企業に育て上げたばかりでなく、第二電電、現在のKDDIを立ち上げ、経営破綻した日本航空を2年余りで再建するなど、世界にも知られる経営者です。その稲盛さんが京都賞を創設したのは、1984年のことです。
【ふるさと鹿児島「この景色だけは世界中、どこにも負けん!」】
【アナ】「稲盛さんがふるさと鹿児島の地を踏まれるたびに、いろいろなことを思われると思いますけれども、今回帰られてどんなことを思われましたか?」

【稲盛さん】
「ふるさとというのは、本当にいいものだと思いますね。ですから、鹿児島が良くなっておるから良いというのはなしに、非常に感傷的に気持ちになりますから。どうしてもふるさとはいいものだと思っています。鹿児島に住むのは、灰の影響やら噴火の影響等で大変ですけれども、これだけの鹿児島から見た、錦江湾をへだててみた景色というのは、世界の中で絶景だと思いますね。私は、この景色だけは世界中、どこにも負けん!という気がしていまして、世界に行っても自慢しているんですけどね。」
【「経済のメカニズムを根本から…」】
【アナ】「心の時代と言われた21世紀、稲盛さんはどんなにしたいと思っていらっしゃいますか?」
【稲盛さん】
「おそらく、少子高齢化はもっともっと進んでいきましょうから、医療介護の費用というのはうなぎのぼりに増えていって、国家財政を窮屈なものにしていくだろうと思うし、その中で、税収が滞っていくなかで施術の方、つまり介護福祉に対する施術がうなぎのぼりに増えていくという。国家財政が現在でも破綻しかかっているわけですが、国家財政がこれでもっていくのかとどうかという。そういう意味では、大変厳しい時代になっていくのではないかと。つまり、政治の舵取りというのは大変難しくなっていくのではないかと思っています。」
【足るを知る】
【稲盛さん】
「こんなことを言うといけませんけど、やはり、我々国民も、少し贅沢なことをしないで辛抱しながらですね。生きていくということを考えないといけないのではないか。ところがですね、それは、私が言うのは簡単なんですが、日本の経済というのは、国民が贅沢をしてくれなければ、国が発展しないと。つまり、消費に頼った経済発展といいますかね。地球上にある資源というのは有限ですから、無限じゃありませんから、そういうものを有効に使って、足るを知るというような生き方をしなきゃいけないのにも関わらず、経済という指標からいくと、贅沢をもっともっと。浪費をするべきだと。という論調になっていくので、今の経済のメカニズムそのものを根本から考えなければならないという時が来るんじゃないだろうかという気がしますね。果たして、今までの経済政策でいいのだろうかとそういう疑問が出てきてしかるべきじゃなかろうかという気がしますけど。」

【思い悩んだ時に「お母さん」という言葉】
稲盛さんは、最近、少し思い悩んだ時に、「お母さん」という言葉が口をついてでてくるのだそうです。「お母さん」には「助けて」と「ありがとう」の二つの意味があるのだそうです。「重責を担う日々のご苦労が偲ばれると共に、稲盛さんの感謝の念を持ち続ける姿勢の素晴らしさを感じた」と取材にあたった藤原一彦キャスターは話していました。
(2015年1月放送MBCニューズナウ「この人に聞く」より)