28日は鹿児島県内の各地で線状降水帯への警戒が続きましたが、ニューズナウでは大雨への備えについてシリーズでお伝えします。
奄美地方では去年6月、2日連続で線状降水帯が発生し、道路が寸断されるなどの被害が出ました。現在も復旧工事が続いていますが、教訓や大雨への備えについて取材しました。
停滞する梅雨前線の影響で、奄美地方では去年6月、発達した雨雲がかかり続ける線状降水帯の発生情報が2日連続で発表される異例の事態となりました。
奄美大島の瀬戸内町古仁屋では、6月21日の降水量が270.5ミリと6月の観測史上1位を記録。瀬戸内町の久慈集落には、土砂や大量の水が流れ込み、61戸のうち10戸で床上・床下浸水の被害が出ました。
Q.(土砂が)落ちそうなところを落としたんですね?
(久慈集落 武田政文区長)「落としたんですね。だからこんなに広くなったわけ」
土砂崩れが発生した現場では、現在も工事が続けられています。土砂に押しつぶされたマンゴーのビニールハウスはそのままの状態で残されていました。
ハウスの持ち主の30代の男性は県外からの移住者でしたが、「同じ場所で農業は続けられない」として先月、奄美大島の別の場所へ引っ越したということです。
(久慈集落 武田政文区長)「マンゴーハウス栽培がちょうど始まったところでしたけど、それがやられてしまったものだから、10年間くらいは無理だとこの場所はということで引っ越ししたんですけどね。もう非常に残念ですよ」
瀬戸内町では、住民のおよそ7割にあたる3400世帯5700人が断水の影響を受け、災害派遣として陸上自衛隊が給水活動を行いました。
瀬戸内町の7割の世帯に水を供給する水源です。水の流れをダムのようにせき止めるような形で取水口が設置されていて、これまでも大雨が降ると度々土砂で塞がれ、問題となっていました。
(瀬戸内町 榮順二水道課長)「去年の災害時はその前日(21日)の雨の大雨の影響でかなりの土砂がこちらの取水の方に堆積してしまい、そちらを除去する作業を朝から始めてはいたが、それでも午前中は断水になってしまうという影響がありました」
町は水源が上流からの土砂でふさがれないよう堤防を一部取り除いた上で、取水口を少し下流の斜面に設置する改修工事を4900万円かけ行う予定でした。しかし、前回の大雨で水源地までの道路が寸断され、改修工事に着工できないままになっています。
工事完了時期は未定で、町では、断水した場合の復旧工事をスムーズに行い、断水の時間を少しでも短くしたいといいます。
(瀬戸内町 榮順二水道課長)「なるべく大雨になりそうだなというときは、前もって現場の方に重機を搬入している。そういった措置をしています」
去年の大雨では、瀬戸内町の隣の宇検村でも大きな被害が出ました。宇検村は焼内湾を囲むように海沿いに県道が走っていて、集落を結んでいます。去年の大雨では土砂崩れが発生し、6つの集落が孤立しました。孤立した集落には船で食料などが運ばれました。
(有島立ちレポ)「宇検村の県道では1年近くなった今でも爪痕が残されています」
土砂崩れにより寸断された県道8か所のうち、復旧工事が完了したのは1か所だけです。
29世帯、60人が住む屋鈍集落です。去年の孤立した集落の一つです。
(屋鈍集落 政野智恵区長)「どうしてもそうなると思いますね、ここは。何度も経験はしているので。(Q.1年経っても復旧がまだ?)まだ(道路も復旧)できていないですもんね」
集落では去年3月、非常食を保管しておく備蓄倉庫やプロパンガスを燃料とする発電機を備えた防災会館を、村が9500万円かけ整備しました。発電機で最大5日分の電力がまかなえ、会館にはシャワー室や冷蔵庫、ガスコンロなどもあります。
村では村内に14あるすべての集落で、公民館の改修などで防災会館を整備したいとしています。
(屋鈍集落 政野智恵区長)「本当にこういうのがあると助かりますもんね。災害の規模も大きくなってきているので、やっぱり備えがないと」
今月21日に梅雨入りし、本格的な雨のシーズンに入った奄美地方。ハード面の復旧や整備が進む一方で、住民それぞれが大雨にどう備え、いざという時にどう行動するか、考えておくことが大切です。







